2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530120
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
古澤 泰治 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (80272095)
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Keywords | 自由貿易協定 / ネットワークゲーム / 域外関税率 |
Research Abstract |
海外共同研究者である小西秀男氏(Boston College)と本テーマにおいて共同で執筆した最初の論文"Free Trade Networks"の改訂作業を行った。重点的に検討したのが、自由貿易協定(FTA)の締結に伴う域外関税率の変化とその効果である。まず、域外関税率が変化しないときは、域外関税率が低いほど、その国はFTAを結ぶインセンティブが高いことを示した。この結果は、FTAとWTOラウンドによる多国間貿易自由化交渉の補完性を示唆している。多国間貿易自由化交渉により、各国の関税率が引き下げられると、FTAも多く結ばれるようになってくる。これは、GATT/WTOラウンド交渉の結果、工業品に対する関税率が低下するとともに、非常に多くのFTAが結ばれてきている現在の様子を理論的に説明するものである。しかし、FTAの締結は域外関税率引き下げのインセンティブを生むことが知られている。FTAの締結と共にその国が域外関税率を引き下げるならば、そのこと自体は域外国に利益をもたらす。実際、理論的には、域外国はFTAによって差別的待遇を受けるにも関わらず、FTA締結国への輸出が増加し利益を得る可能性があることが知られている。我々の分析フレームワークでも、そのことが確認された。当該FTA締結国と既にFTAを結んでいる国にとっては、その新たなFTAは望ましいものではないが、完全な域外国にとっては、関税引き下げ効果がFTAによる締め出し効果を上回り、そのFTAは好ましいことが示された。域外関税率がFTA締結に従い内生的に変化する場合のFTAネットワーク形成についても分析を進めた。その結果、全ての国が対称的なとき、対称性を保ちながらFTAを形成するならば、各国は常にFTAを締結するインセンティブを持ち続け、それは実質的な自由貿易を実現するFTA完備ネットワークが形成されるまで続くことを示すことができた。
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Research Products
(2 results)