2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530179
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
大来 洋一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70303089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小塩 隆士 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (50268132)
小野 美紀 (小原 美紀) 大阪大学, 国際公共政策研究科, 助教授 (80304046)
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Keywords | 貯蓄率 / 個票 / 年金の再分配効果 / 世代内再配分 / 所得格差拡大 / 不確実性 / 社会保障の貯蓄代替 / 共和分関係 |
Research Abstract |
マクロ面からの分析については、不確実性を考慮した消費関数のサーベイを行ったが、その結果、中川忍(1998)、「不確実性下の消費者行動」(日本銀行WP 98-6)のやり方を応用できることがわかった。これは基本的にC-CAPMの考え方を使うものである。オイラー方程式が異時点間の消費選択は金利のみで説明されるはず、という結論になるのに対して、この手法では流動性制約要因と不確実性要因が説明変数に加わる。この不確実性要因を中川と異なり、年金不安でおきかえて計測を試みることが考えられる。(近日中に終了予定) さらにマクロ面の分析として、cointegrationを用いて、家計貯蓄と政府貯蓄と社会保障基金収支の間に共和分の関系があるかどうかを計測したところ、関係はあるものの、家計貯蓄と社会保障基金との間の関係は代替的なものではないことがわかった。これは先行研究における計測と異なるが、初年度に行った計測とは整合的である。また、この分析に用いたデータは1998年までのいわゆる68SNAであるが、これが93SNAの家計貯蓄率とは、1990年代にかなり異なった動きを示していること、またその要因が何かが明らかになった。 ミクロ面の分析については、今年度の成果としては、第1に公的年金給付が、高齢層の所得や貧困率に及ぼす影響を、公的年金給付の内生性を明示的に処理しつつ、「所得再分配調査」の個票を用いて定量的に分析した。その結果、公的年金給付が高齢層の厚生に有意な正の影響を及ぼしていることなどを見出した。第2に同じく「所得再分配調査」の個票を用いて分析した結果、(1)過去20年間における格差拡大の6割程度は高齢化や世帯規模の縮小によって説明できるものの、年齢階層内の格差拡大も高齢層を中心に無視できないこと、(2)若いコーホートほど格差が拡大していること、(3)再分配政策のほとんどが世代間で行われ、世代内ではかなり限定的、などが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)