2003 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーション下の開発ガバナンスと貧困・所得格差との社会経済システム分析
Project/Area Number |
15530184
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大坪 滋 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 教授 (40247622)
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Keywords | グローバリゼーション / 経済開発 / ガバナンス / 所得格差 / 貧困 / 社会経済システム |
Research Abstract |
経済活動の急速なグローバリゼーション下、特にそれを要因とする危機や社会不安発生時に、当該国の社会経済体制、経済マネジメント、企業統括、金融セクター運営においての総じてプア・ガバナンスが指摘されるにいたっているが、健全なガバナンス、社会制度を含んだ国家ガバナンス、経済ガバナンスの守備範囲、これと経済パーフォーマンス、(均等成長、貧困減少などの)社会パーフォーマンスとの相関関係、因果関係に関する分析は未だその緒に就いたばかりである。 初年度は、UNDP、世界銀行、IMF等において行われてきた開発ガバナンスの議論を整理し、その諸要素の定義確認、数量化研究のレビューを行った。開発マネジメントとしてのガバナンスを理論的に捉えるにあたり、構造主義経済学および新制度学派のフレームワークがどう使われるべきかを検証した。グローバリゼーション下での金融危機等の経済危機において、開発ガバナンスが危機の深刻度、長さに影響を与えるという実証研究を1990年代後半のアジアの金融危機を中心にサンプリングし、その貧困・所得格差拡大へのインパクト分析の準備をしている。「東アジアの奇跡」と言われ、外資導入、輸出振興によって高成長を遂げた後、急速な資本自由化の失敗から危機を経験したタイとインドネシアは、危機以前の貧困減少、所得格差・地域格差の縮小拡大を経験しており、社会構造の変革を含めた開発ガバナンスのあり方が問われている。 そして、タイおよびインドネシア両国において現地調査を行い、グローバリゼーションの地域格差、経済成長の地域格差に関するデータ収集を行った。整合的な分析を待たねばならないが、初期のインプリケーションとしては、グローバリゼーション下のマクロマネジメントは大事であるが、危機対応を含めて、これらが随時好転しているというダイナミズムが安定的経済成長・開発に重要であると思われる。
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