2005 Fiscal Year Annual Research Report
貿易政策の動学的研究:保護貿易政策の形成と展開の研究
Project/Area Number |
15530185
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片山 誠一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70047489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 博史 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50118006)
冨浦 英一 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (40273065)
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Keywords | 日本の商習慣 / 政治文化 / 系列企業 / 保護主義的政策 / 自由貿易政策 / 政治的収斂 / 関税政策 / 日本の国際通商政策 |
Research Abstract |
本年度の研究は、平成16年度の研究をさらに深めて2点の研究成果にまとめている。研究課題は、経済のグローバル化と経済政策の形成における政治過程のかかわりを分析することにある。経済政策特に貿易政策が、政治経済の決定過程を経て実行されるので、政治風土や経済特に商慣習などが重要な影響を及ぼす。従来の経済学ではこれらは、与件として与えられており、明示的にその影響を取り扱っていない。政治文化と商慣行とが、経済政策あるいは貿易政策の形成に関連していることを昨年度までに明らかにしている。長期的には経済のグローバル化は、その文化や慣習に影響し、政治決定過程を通じて貿易政策形成に影響を与えてゆく。複雑な両要素の関わりを通じて、自由貿易政策と保護貿易政策が相互に収束することもありうるし、またいずれかの両極端に分かれて行く過程を取ることもありうることが示された。その論証は、理論モデル構築と分析とによっている。ところが、モデルの構築上様々な前提を設けており、また分析が容易になるように簡略化も進めている。これらの仮定や前提などの持つ意味と限界を論じたものが研究発表のうち雑誌論文の2番である。特に主要なポイントは、政治文化・商慣習を与えられたものとして貿易政策が形成されるが、動学的発展過程を見る限り政策が実行されその結果逆に、政治文化・商慣習が影響を受けて相互関連して経済は展開してゆくという側面が理論モデルでは取り入れられていないことである。この点をさらに探求することが次期課題である。 第2に制度自体の影響が、どのように個別の経済主体の選択にかかわっているかの実証研究である。企業の海外直接投資が自由貿易促進の為の制度により実効性が促進されているか、その例を日本企業の対中国直接投資と知的所有権保護政策のかかわりの実証分析によって検討している。直接投資に伴う知的所有権保護が実行されないと、自由貿易促進の為の投資の自由化は疎外され、保護主義的な政策を求めやすい。我々の、実証結果では少なくとも中国での知的所有権保護制度は、むしろ技術情報の伝播の役割を果たしてはいるが、十分な保護がなされていないという結論を得ている。
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Research Products
(4 results)