2005 Fiscal Year Annual Research Report
診療報酬支払制下での患者と医療機関の選別に関する理論・実験経済学的研究
Project/Area Number |
15530198
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
稲垣 秀夫 四日市大学, 経済学部, 教授 (70159937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 徹 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60134160)
鎌田 繁則 名城大学, 都市情報学部, 教授 (70214509)
赤木 博文 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (30254270)
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Keywords | 医療費抑制 / 診療報酬総枠 / 診療報酬単価 / 医療機関の競争 / 医療サービス / 社会全体の総治療量 / 規制緩和 |
Research Abstract |
平成15〜17年度にわたる本研究は、効率的な医療資源配分と医療費抑制を達成するために、診療報酬総枠の制約条件下で出来高払制と包括支払制を組み合わせる診療報酬制度における患者と医療機関の双方における選別の問題を追求することを目的としている。最終年度に当たる平成17年度には、診療報酬の一定総額枠内での出来高払制における診療報酬点数(公定価格)の調整が医療機関が提供する患者治療レベルに与える効果を分析した。具体的には、現在のように特定な疾病の治療点数単価が事前に固定的に決定されるのではなく、総額枠制下で患者に施された治療量に応じて事後的に決定される出来高払の診療報酬支払制度を考え、この制度下での医療機関が患者に施す治療レベルを決定する理論仮説の確立と実験的検証をした。理論仮説の検証実験を行う際には、学生等の被験者に実験内容を十分に説明し同意を得た上で遂行するように十分な注意を払っている。以下に述べる研究成果を得ている。 特定な一種類の疾病に対する診療報酬の総額が一定額に決められている状況で、この疾病の診療単価が出来高に従って各医療機関からの診療請求点数の合計、すなわち総請求点数で一疾病の一定診療報酬総額を除して決定される診療報酬単価支払方式と医療機関のクールノー・ナッシュ競争を想定する医療サービス供給において、医療機関数が増加し医療機関同士の競争が促進されると、この特定疾病に関する社会全体の総治療レベルは医療機関数が相対的に少ないときよりも高くなる。しかし、理論仮説の検証実験では、医療機関の適正な数を超えると、医療機関が患者に提供する医療サービス供給にバラツキが見られた。このことは、理論モデルにおける医療機関の競争設定の見直しが必要であるが、医療機関の競争促進のための規制緩和が行き過ぎないことの必要性を示唆しているといえる。
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