2003 Fiscal Year Annual Research Report
金融システムにおける市場規律についての理論的・実証的考察
Project/Area Number |
15530224
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前多 康男 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60229317)
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Keywords | 金融システム / 市場規律 / モラル・ハザード |
Research Abstract |
本研究では,現在金融システムが抱えている不良債権が,長引いている不況の根本的な原因であり,そしてその膨大な不良債権発生の原因が,銀行にモラル・ハザードが発生したことにあるとの認識から出発している.21世紀におけるわが国の金融システムを根幹から改革するためには,銀行のモラルハザードを防ぐメカニズムを,金融システムに内在させる必要がある.そのようなメカニズムを考える際の核となる市場規律について,理論的・実証的な考察を行うことを研究目的としている.銀行のもつ情報生産機能の重要性を踏まえて,この機能を資源配分が効率化される方向で活用していくために,どういう形で銀行を規律付けるかということが大きなテーマであり,そのような観点にたって市場による規律付けの効果について分析を進めてきた. 平成15年度においては,銀行の規律付けに関する理論的な論文のサーベイをまず行ってきた.銀行の規律付けに関しての論文として,規制により銀行の資産のリスクをコントロールするという発想から,または,金融当局の監督により規律付けを行うという発想から記述された論文は多数存在する.これらの文献の整理を行うとともに,実際の銀行債や劣後債のマーケット・メークを行っている証券会社の担当者から,実際のディーリングの方法や,スプレッドの決め方に関する情報収集を行った. 理論モデルとしては,単純な設定でまず試験的なモデルを組み上げ,その後,実証結果と照らし合わせる形でモデルを複雑化することによって,そのパフォーマンスを向上させたいと考えている.最初の試みとしては,銀行と預金者からなる,単純な「プリンシパル・エージェント・モデル」を組んだ.
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Research Products
(1 results)