2004 Fiscal Year Annual Research Report
課税の中立性とわが国の金融所得税制のあり方に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
15530229
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馬場 義久 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80148022)
|
Keywords | 二元的所得税論 / 金融所得課税の一元化 / 総合課税論 / ロス控除制 / 法人税制との統合方式 |
Research Abstract |
平成16年度の研究によって得た主な知見は以下のとおりである。 1.わが国の現行金融所得税制のロス控除制の問題点に関して次の知見を得た。 (1)現行税制では配当と株式の譲渡益に関して損益通算が認められない。本研究はこの措置が、株式所得(配当と株の譲渡益)の実効税率を利子税率より著しく高めていることを、実際の株式所得・利子所得の推計を行うことによって明らかにした。 (2)同様に、配当と株式の譲渡益に関して損益の通算措置のないことが、金融所得(この場合、利子と株式所得の和)の実効税率を、シミュレーションのベンチマークである20%よりどの程度高めているかを計測した。たとえば、93年度のデータによるとその税率は33%と計測された。 2.金融所得税制の改革方向に関して次の知見を得た。 (1)金融所得全体を課税ベースとして一括し、その純収益に単一の税率を課す、いわゆる金融所得課税の一元化が改革の基本方向として支持される。 (2)改革の方向(1)は総合課税論によっても二元的所得税論によっても正当化可能であるが、理論的にも北欧諸国の経験からも、またわが国の所得税の現状からも、後者の二元的所得税論にのっとった方がベターである。ここで、所得税の現状とはわが国の勤労所得税制の税収調達力がきわめて低いことを指している。 (3)金融所得課税一元化が実現したとしても、法人税制との統合方式の検討が重要な課題である。ノルウェーは純粋な二元的所得税のもとで留保と配当、双方の完全統合を行っており注目に値する。しかし、非居住者と居住者を統合方式で非対称に扱っているため「二重課税緩和権」の売買が生じるなど問題が指摘されている。開放経済下で有効な統合方式の検討、ひいてはキャッシュフロー法人税など利潤タイプとは異なる新しいタイプの法人税の検討が、今後の課題として重要である。
|
Research Products
(3 results)