2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣田 功 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90055236)
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Keywords | フランス的工業化 / 消費社会 / 集合生産 / パリの工芸品 / 奢侈品産業 / デパート / 大規模商業 |
Research Abstract |
19世紀フランスの工業化、いわゆる「フランス的工業化」l'industrialisation a la francaiseの歴史的特質に関連する論点の中で、本年度は在来産業の再評価と地域工業化の枠組みの重視という側面について研究を行なった。 具体的には、パリの工芸品産業の典型とみなされる家具産業をとりあげ、第二帝政期の「消費社会」の発展に対応して、それが高級奢侈品生産から「大量生産品」を含む複合的な産業として再編される歴史的プロセスを検討した。この産業再編は、時人の大きな関心を呼び、P.du Maroussem, La question ouvriere, 1892の精緻なモノグラフに代表される研究が生まれたが、これまでこの間題は本格的に検討されて来なかった。そこで本年度は、消費社会の展開に対応して、問屋商人の主導によってパリの工芸品産業が「集合生産」production collectiveとして再編される過程とその帰結について研究した。 またこの過程は、世界最初のデパートの誕生に象徴される「消費社会」の展開と密接に関連しているので、当該期の「消費社会」に関する近年の研究を、Martin Sain-Leon, Le petit commerce,など当時の「消費社会」論とつき合わせながら検討した。その結果、デパート以外に、従来の研究において殆ど看過されてきた多様な形態の大規模商業が誕生し、労働者を含めて多様なパリの住民が、階層性を維持しながら「消費社会」に包摂されていた実態が明らかとなった。また上記の奢侈品産業の再編も、このような広汎な「消費社会」の展開を基礎に持った現象として捉えられることも明らかとなった。
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