2004 Fiscal Year Annual Research Report
百貨店と零細小売商からみた近代期日本の消費生活に関する実証的研究
Project/Area Number |
15530235
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中西 聡 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (20251457)
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Keywords | 百貨店 / 小売商 / 近代日本 / 消費生活 / 民衆生活 / 地方資産家 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代期日本の民衆の消費生活の様相を、最終消費者を顧客とした商店の史料を用いて検討し、人間の生活のあり方の歴史具体的展開を描くことである。今年度は、昨年度の続きで最終消費者の家に残されている「通帳」(小売商が購入者に掛売りしたものを記帳して、期末ごとに小売商が購入者にそれを示して代金を回収した帳面)を収集するために、富山県の水橋郷土資料館や宮林家を訪れた。また、百貨店の社史や百貨店業界紙を東京大学経済学部図書館等で調べ、百貨店と競争した大都市の零細小売商を調べるため、大正・昭和戦前期に行われた大都市の社会局等の社会調査資料が復刻されて活字になったものを購入した。一方、昨年度収集した百貨店の「いとう呉服店」(現株式会社松坂屋)の経営分析を今年度は本格的に開始した。松坂屋本社に所蔵されている「いとう呉服店」時代からの同社資料は、大きく5つに区分され、(1)営業報告書、(2)大正後半から昭和初期にかけての経営帳簿、(3)「モーラ」等の広報誌、(4)座談会記録、(5)昭和戦前期の各店(名古屋・上野・銀座・大阪)の社内報、からなっていた。まだ同社の分析は完了していないが、両大戦間期に進んだと言われる「百貨店の大衆化」の実態を解明するため、今年度は以下の方法で分析を進めた。(1)「百貨店の大衆化」の指標の一つである入場者数の推移を、イベントとの関連・季節性など細かく検討する。(2)主要商品の販売価格の推移を、広報誌を利用して商品別・時期別に細かく検討する。(3)商品部門制度が採られた1918年以降の部門別収支を、店舗内の各部門と外売部門を併せて時系列で細かく検討する。(4)「百貨店の大衆化」に伴い、商品の仕入れルートがどのように変化したかを、座談会記録や社内報を利用して検討する。(5)以上の分析を総合して、「百貨店の大衆化」と「百貨店経営の近代化」の関連を考察する。
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