2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本の外資系企業における技術移転とコーポレート・ガヴァナンス
Project/Area Number |
15530241
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
奈倉 文二 獨協大学, 経済学部, 教授 (10007825)
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Keywords | 外資系会社 / 技術移転 / コーポレート・ガヴァナンス / 兵器産業(軍事関連産業) / 海軍工廠 / 財閥(三井・三菱・住友) / 日本製鋼所 / イギリス側株主 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦前日本の外資系企業(とくに財閥系及び軍事関連大企業)の「コーポレート・ガヴァナンス」について「技術移転」と関連させつつ明らかにすることである。 今までの研究代表者の研究は、日本製鋼所・日本爆発物会社等の代表的な兵器産業・軍事関連大企業の外資系会社を対象として、イギリス側株主・日本側出資者及び日本海軍のねらい・思惑と実際に設立された会社のトップマネジメントにおける様々な問題や主要工場における技術移転をめぐる問題などを検討することにより、「コーポレート・ガヴァナンス」のあり方を明らかにしてきた(平成15年度及び16年度「研究実績報告書」記載参照)。 しかしながら、兵器産業ないし軍事関連大企業の場合は、軍(この場合とくに海軍)の方針・政策は言うまでもなく、海軍工廠や火薬廠の生産実態・技術水準などが密接に関わるので、平成17年度は四大海軍工廠(横須賀・呉・佐世保・舞鶴)及び三火薬廠(平塚・舞鶴・船岡)の生産実態・技術水準の把握に努めた。とくに日露戦争から第一次大戦期にかけての四大海軍工廠の生産実態・技術水準については、民間兵器産業・軍事関連産業育成・発展のあり方(外資系に限らず外国兵器産業からの技術移転と海軍の指導や海軍工廠からの技術移転との関わりをどう把握するか)をめぐる議論との関係で極めて重要な意味をもつので、重点的に資料収集を行った。 また、外資系企業における技術移転を検討する場合、当然のことながら外資の側の経営関与を可能な限り排除しながら技術移転を行うことが重要な意味を持つ(「資本的独立」と「技術的独立」との関連いかん)。この点も政府・海軍全体の「武器移転」と「軍器独立」のあり方とも密接に関わるので、平成16年度に引き続き、17年度もこの点の考察を進めている。 なお、財閥系企業については、今までの研究は日本製鋼所のような三井系企業を中心に検討してきたが、三大財閥(三井・三菱・住友)中では、むしろ三菱・住友系の重化学工業企業の方が軍事との関連も全体的には濃厚であるので、平成17年度においては三菱系の鉄鋼兵器産業についての資料収集を行った(住友についても検討しているが資料的制約が厳しい)。 上記のごとく、平成17年度においては従来の研究代表者の研究でやや手薄であった分野を中心に資料収集と考察を行ってきた。それに要する時間が予想以上であったため17年度中にはその成果を発表するには至らなかったが、4年間の研究全体においては不可欠な資料収集と考察であったし、最終年度にあたる18年度においては、これらの17年度の作業を十分生かせると考えている。
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