2003 Fiscal Year Annual Research Report
通信機ビジネスの勃興と企業家活動-沖牙太郎と岩垂邦彦を中心に-
Project/Area Number |
15530242
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
長谷川 信 青山学院大学, 経営学部, 教授 (40144050)
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Keywords | 通信機 / 沖牙太郎 / 岩垂邦彦 / 沖電気 / 日本電気 / 国産化 / 企業家活動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、通信機工業の勃興期であった明治期を対象に、沖牙太郎と岩垂邦彦の企業家活動に焦点を当て、当該期の通信機ビジネスの特徴を明らかにすることであった。そのため、本年度においては、資料収集・整理に重点を置き、沖牙太郎関係資料、明治期官報、岩垂邦彦関係資料などの収集、整理をおこなった。そのうち、沖牙太郎関係資料では、第1に、逓信省(電信寮)、沖商会の通信機器製造に関する国立公文書館所蔵資料、『電気の友』などの雑誌記事を収集した。また第2に、ウエスタンエレクトリック社が日本に派遣したカールトンの書簡の収集、整理をおこなった。これらの調査研究によって、逓信省の沖商会に対する技術的評価や沖商会の事業の中で電線事業が重要であったことなどが明らかになった。また、カールトン書簡によって、日清戦後の沖商会にとって輸入ビジネスが重要になっていたこと、また沖牙太郎はウエスタンエレクトリック社との輸入代理店契約に対して積極的な行動をとっていたことが明らかとなった。沖牙太郎は新規事業や輸入ビジネスに積極的であり、ウエスタンエレクトリック社との提携についても、いったんは提携を決断していた。提携が実現しなかったのは、むしろウエスタンエレクトリック社側の対応に原因があった。沖牙太郎の行動は当初から「国産主義」だったのではなく、むしろ「国産主義」は結果であった。また、ウエスタンエレクトリック社と沖牙太郎を仲介したのは岩垂邦彦であり、両者の交渉プロセスを分析すると、そのキーパーソンは岩垂であった。海外経験が豊富で、アメリカGE社の輸入代理業をおこなっていた岩垂は、逓信省・沖商会・ウエスタンエレクトリック社を結ぶ接点として機能したのである。
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