Research Abstract |
本年度当初の「研究実施計画」に記したように,平成17年度においては,戦後の配給統制の撤廃期から各メーカーが再販売価格維持制度を導入する直前までの,各メーカーと卸店,卸店と小売店,各メーカーと小売店,のそれぞれの間の取引制度や取引構造がいかに変容したかを明らかにするために,各メーカーの所蔵史料,各地方の大学や公共図書館の所蔵する諸史料について調査を行い,さらに関係者への聞き取り調査を実施した。平成17年度において主な事例研究の対象としたのは,ライオン歯磨,ライオン商事,花王石鹸などであり,それらに関わる取引構造や取引制度について実証的な検討を進めた。これらの検討によって,明らかにされた主な成果は次の通りである。 先ず,ライオン歯磨の事例では,都市部卸店の方が地方卸店よりも長期的な取引関係を有していること,都市部卸店の取引関係ではその「専門化」ゆえにライオン油脂よりも花王石鹸との取引を兼ねる代理店が多いが地方卸店の場合その取引品目の「総合性」のゆえにライオン油脂・花王石鹸双方との取引店が多いこと,大阪の代理店の取引関係が京阪神以外の地域にも広く及んでいたこと,などが明らかにされた。次に,ライオン商事とその前身会社の事例では,戦時から戦後の統制期にかけて,ライオン油脂傘下の卸店としての機能を喪失したが,「石鹸配給規則」撤廃後にはライオン油脂直属の卸店としての機能を回復していったこと,などが明らかにされた。第三に,再販導入前の花王石鹸では,返品問題や手形サイト短縮の問題が課題とされており,手形サイトの短縮が推進されるとともに,代理店傘下の特約店の見直しなどの流通機構の改革も進められ,現金取引制度の導入,予約販売制の導入および随時出荷制への移行など,諸種の改革が実施され,それらが後の再販や販社の準備となったことが明らかにされた。
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