2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業の人的資源管理における個人情報の非対称性と粘着性に関する調査及び研究
Project/Area Number |
15530258
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平野 光俊 神戸大学, 経営学研究科, 助教授 (10346281)
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Keywords | 日本型人事管理 / アメリカ型人事管理 / 能力主義 / 職務主義 / 人事情報の非対称性 / 人事情報の粘着性 / 双対原理 / 組織モード |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代の日本企業における機能的な人事管理形態を、ケース・スタディとサーベイ調査から明らかにすることである。ケース・スタディでは日本型人事管理の進化プロセスは次のように進展することが明らかになった。環境変動から到来するシステム・ショックが仕事の調整様式に修正圧力を加える。経営者はそれにうまく対応するように仕事の調整様式と人事管理の仕方を改革する。しかし,その進展の過程では,仕事の調整様式,人的資源の技能タイプ,人事管理の補完関係の帰結から意図していなかった逆機能が顕在化する。そして,問題点を改良するように組織内部でさまざまな試行錯誤が起こる。最終的に行き着いた日本型人事管理の進化型は次のような特性を持っている。まず,階層の上位に集権する垂直的調整が強まる。同時に人事管理は人事部からラインに分権化する。その帰結としてインセンティブ・システムは能力主義から職務主義に転換されるが,人事権の人事部集中は部分的に継続する。インセンティブ・システムの内実は,職務を厳密に評価する職務等級制度ではなく,職務主義を基軸にしつつも社員の能力の伸長を含めて評価する役割等級制度となる。ただし,役割等級制度はランクや配置の決定権をラインに委譲するように作用するので,ラインと人事部の人事情報の保有格差は大きくなる。それゆえ,人事部は人事情報の費用を節約するように新しい人事施策を追加する。その施策とは,コア人材の人事部個別管理強化とキャリア自律支援の拡充である。このことは上場製造業の人事部長を対象とするサーベイ調査の結果からも確認できた。以上から、本研究では、人事情報の非対称性と粘着性に由来する「人事情報の費用」という人事管理の機能性を条件づける新しい概念を導出し、日本型人事管理は人事情報の費用問題を解決するように進化的に修正されることを主張する。
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Research Products
(4 results)