2004 Fiscal Year Annual Research Report
日米欧における低費用航空会社の企業活動が地域・国民経済に与える影響の比較計量分析
Project/Area Number |
15530284
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
村上 英樹 神戸大学, 経営学研究科, 助教授 (90243295)
|
Keywords | 寡占的競争 / 低費用航空会社 / 経済的厚生 / ダイナミック・イフェクト / 外部性 / ネットワーク航空会社 / 輸送密度の経済 / サービス差別化 |
Research Abstract |
1.米国内3社寡占航空市場における低費用航空会社の参入の影響について実証的研究を行った。以下はその要約である. (1)直接的競争の場合,LCCのライバル2社の運賃は低下する.輸送量は増加もしくは微増する. (2)第2空港とメイン空港間の間接的競争では,LCCのライバルの運賃は低下または微減,輸送量は微増する. (3)企業の費用水準が大きくばらつくほど,市場の平均運賃は低下する. (1)と(2)に関しては,差別化が有意にライバルの輸送量を増加させる例が1件だけエア・トランの直接的競争の場合と,サウスウエスト航空の間接的競争の場合に存在した.これを解釈すると,エア・トランの参入により,市場全体の規模が拡大(つまり需要曲線全体が右上にシフト)し,本来減少すべきライバルの輸送量も増加していると考えられる.サウスウエスト航空の間接的競争の場合も同様の効果が現れているのだろう.以上の(1)〜(3)の実証結果を鑑みると,低費用航空会社がネットワーク航空会社に対してサービスの差別化をはかり,低費用を追求するほど,経済的厚生が改善される方向に向かうと考えられる. 2.1996年から2000年にかけて,米国国内の複占航空市場で新規参入が観察された路線を対象とし,新規参入による運賃競争の効果がどの程度持続するかを寡占経済理論および計量経済学的手法により明らかにした.その結果,サウスウエスト航空が新規参入を行った路線では,一時的に市場規模が拡大した後,長期的に運賃は低いレベルで安定する.輸送量については,直接的競争の場合にはライバル航空会社のそれも増加する一方で,セカンダリ空港からの間接的競争の場合は,ライバル航空会社の輸送量は減少する.サウスウエスト以外の新規参入の場合には,新規参入後約4年で,運賃競争は終息し,運賃水準は回復する.サウスウエスト航空の新規参入後の運賃戦略は明らかに他の航空会社のそれとは異なり,一貫して低運賃戦略を継続することが分かる.同社の参入の市場への効果については,直接的競争の場合は明らかに長期的に経済厚生水準に改善される一方,間接的競争の場合は路線次第となる.
|
Research Products
(2 results)