2004 Fiscal Year Annual Research Report
東方領土問題と戦後ドイツのナショナル・アイデンティティ
Project/Area Number |
15530318
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 助教授 (90292466)
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Keywords | ドイツ / ナショナル・アイデンティティ / 追放 / オーデル=ナイセ線 / 東方政策 / ナショナリズム / 東方領土 / ドイツ政策 |
Research Abstract |
本年は、主として夏のポーランドおよびドイツでの調査を行った(2004年8月23日から9月15日)。ポーランドでは旧ドイツ東方領土の一部シュレージエンを中心に回り、昔のシュレージエンの中心地ヴロツラフ、現在でも多くのドイツ人マイノリティの住むオーポーレ、また第一次大戦後のドイツ人とポーランド人の民族対立の象徴的な場所であり、現在でもその対立の記憶が政治問題にもなったアンナベルクなどを視察した。またかつてのドイツ人の保養地であり、今でも多くの被追放者ドイツ人たちの訪れるリーゼンゲビルゲなどにも足を伸ばし、現在のこの地とドイツとの関係について観察した。 その後のドイツでは、例年のようにベルリン州立図書館で資料収集にあたった。主として1990年代前後の連邦議会の議事録、そして被追放者同盟の機関紙Deutscher Ostdienstのバックナンバーを調べ、1980年代後半からドイツ統一(およびポーランド西側国境の最終承認)に至る過程での東方領土問題の扱われ方、そしてそこで示されている「ドイツ」の自己認識(ナショナル・アイデンティティ)の関連について調べた。領土問題の「属地的」側面と「属人的」側面の両面を分けてとらえ、ポーランド西側国境の承認は、「属地的」な領土主張を終わらせたが「属人的」側面をむしろ純化させる結果をもたらし、2000年代に入ってもこの側面での東方領土問題は依然としてドイツとポーランドの外交問題に影を落としていることがわかった。最近の「反追放センター」問題、また被追放者の旧財産権問題などがそのあらわれである。 また今年は、「追放」関係の文献がドイツで少なからず出版されており、その購入にも研究費を用いた。 現在集めた資料を分析中であり、今年度中には論文として発表する予定である。下記に表記した論文は、ここでの調査と直接関係しないが、その前提としての理論枠組みを構想している。
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Research Products
(1 results)