2004 Fiscal Year Annual Research Report
身体の視覚的編制:視覚経験と社会的世界の再帰的編制をめぐるミクロ社会学的研究
Project/Area Number |
15530321
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
安川 一 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (00200501)
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Keywords | ミクロ社会学 / 視覚社会学 / 社会的世界の視覚的編制 / 自叙的イメージ法 / 主観的視覚経験 / 映像メディア / 自叙的写真法 / 写真誘出的インタビュー |
Research Abstract |
本研究は、ミクロ社会学-視覚社会学的アプローチに基いて、視覚的身体像とその受容を題材に、「社会的世界の視覚的編制」に関わる経験的研究を企図しておこなわれた。研究は自叙的イメージ法を軸にして進められた。自叙的イメージ法とは、人々の主観的視覚経験の世界を、映像メディアによる視覚データ化を手掛かりに把握しようとする手法である。この手法は自叙的写真法と呼ばれてきたが、本研究は静止画のみならず動画も含む方法論へと展開する目的でこれを自叙的イメージ法とした。本研究ではまず、「私自身が見る私」というテーマで約250人の大学生に写真撮影を依頼し、撮影された写真について質問票(記述シート)を用いて説明記述を求め、約6000枚の写真を含むこれらのドキュメントを収録したデータベースを作成した。ついで、先行研究に準じた手続きで、説明記述のある写真(対象者1人あたり10枚)をコーディングし検討した。加えて対象者の一部には写真説明の掘り下げのための詳細なインタビューを行なった。元来、自己概念の獲得・構成には他者との関係が重要だとされており、先行研究でもヒトならびにつながりの様子を示す画像の頻出(もしくは被験者の諸条件によるその多少)がしばしば言及された。けれども本研究ではヒト画像の出現頻度は特に高いとはいえず、また、女性被験者につながり画像の出現頻度が高いとする多くの先行研究の指摘は確認できなかった。その一方で所持物、占有物、習慣的使用物等、モノ画像の出現頻度が比較的高かった。同様の"モノによる映像的自分語り"傾向は、約30サンプルによる自叙的動画ファイルにもみられた。結果として、当初の関心であった視覚的身体像の検討に直接に関わるデータは充分に得られなかったが、本研究では主観的視覚世界の編制を探る拠点(モノ配置による世界の編制)が確認され、これを今後の研究再編の指針とすることとした。
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