Research Abstract |
最終年度にあたる今年度は,総括として,質的インタビュー調査の概念と論理について,近年の欧米圏での達成をふまえた再検討を行ない,その内容を中心に研究成果報告書のとりまとめを行なった。再検討の要点は3点。第1に,従来の「採鉱モデル」に代えて,「交渉モデル」に基づくインタビューの再概念化が必要であることを確認した。その上で,第2に,質的インタビュー認査に含まれる,「質的」,「インタビュー」,「リサーチ」という3要素に着目して,質的インタビュー調査の再概念化をはかった。そして,質的インタビュー調査とは,当事者性と他者性を帯びた「意味」に焦点を合わせ,調査者と研究参加者との会話的相互行為を通して,両者の再帰的関係の中で,系統的な知識産出をめざす活動であると捉えた。第3に,質的インタビュー調査の「リサーチ」(一貫した論理と手続きに基づく系統的な知識産出活動)としての質をいかに確保するかという問題について,インタビュー調査の論理的階梯として,S・クヴェールらの議論を参考に,主題設定,調査デザイン,インタビュー実査,文字化,分析,確証,報告作成・公表という7段階を区分した上で,各段階での作業や分析の妥当性を確保するための留意点を整理した。合わせて,質的研究の評価規準をめぐって,従来の実証主義的規準に代わるものとして近年提案されている各種の代替案の検討も行なった。なお,本研究の成果の一部を,北陸社会学研究会(2005年9月,金沢)において発表した。
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