2003 Fiscal Year Annual Research Report
基層社会の論理構造と現代的展開に関する研究-日本とタイの比較を通じて-
Project/Area Number |
15530329
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤井 勝 神戸大学, 文学部, 助教授 (20165343)
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Keywords | 基層 / 地域社会 / 村落 / 家族 / 親族 / 近代化 / 日本 / タイ |
Research Abstract |
本年度は、日本では兵庫県但馬地域の山田地区、タイでは東北部マハーサーラカーム県のナートーン地区を事例として、聞き取り調査および関連する史資料の収集を行った。結果として、以下のような点が明らかになった。 まず方法論的な問題で新しい知見を得ることができた。基層社会を「地域社会と家族」としてとらえた場合、その仕組みを内部的文化的視点からとらえるだけでは不十分で、外部環境との関係、とくに支配システムと関連づけてとらえる必要がある。比較においては、とくにこの問題は重要である。 以上をふまえると、日本では近世の支配構造と村落の関係の安定性を背景として、「家と村」による自立的な基層社会が形成されるが、タイでは「食国制」支配における支配者と農民の関係の直接性を背景として、地域社会原理が弱く、家族・親族中心の「バーン」型社会として基層社会が存在することになる。しかし近代になると逆転し、日本では村落がインフォーマル化されて、「家・村」は「自然村」レベルでの維持へと弱体化する。一方、タイでは、テーサピーバーン制度によって、制度化された新しい「ムーバーン」型社会へと革新された。 現代の基層社会の状況がもつ意味も、以上の歴史社会学的把握によって鮮明になる。日本の山田地区では、過疎化も結びつきながら「家と村」の解体の傾向は強い。村落の活性化への内部的動きはあるが、新しい基層社会像は十分に見いだされていない。近代以降に「家と村」の置かれた状態を反映しており、地域社会側がそれをどう最定義してゆけるかが課題となる。一方、タイのナートーン地区では、人口の流出の動きに中でも、近代に確立した「ムーバーン」型社会のうえに基層社会の営みが安定的になされている。そこでは、「ムーバーン」型がむしろ「伝統」として積極的に置き換えられつつ、そのなかに現代の基層社会の発展像が継承されている。
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Research Products
(2 results)