2005 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスの社会・文化的規定性とそれへの適応過程に関する研究
Project/Area Number |
15530332
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 秀夫 奈良女子大学, 文学部, 教授 (00025074)
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40211718)
寺岡 伸悟 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (90261239)
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Keywords | ストレス / 社会学 / 文化人類学 / 適応過程 / 家族 / 地域社会 / ストレッサー |
Research Abstract |
本年度においてすすめた研究は以下のようにまとめられる。 (1)ストレスをめぐる言説はアカデミックな世界と通俗の世界の双方で隆盛の感があるが、その大半は生理学的ならびに心理学的研究である。これらの研究の共通点はストレスの生体内メカニズムと個人的適応過程に関心を集中していること、ストレスをもっぱら回避すべき状況とみなす傾向があることを文献資料の分析から明らかにした。また聞き取り調査からも一般市民がストレスをマイナスのバイアスのかかったイメージでとらえる傾向のあることが明らかとなった。共同研究の議論を通してストレスの科学的研究のためにはこのようなバイアスを取り除く必要があることを確認した。 (2)これをふまえて、社会学並びに文化人類学の観点から以下の、より具体的な研究をすすめた。 (1)社会学・文化人類学の視点から各種ストレスを公平に吟味列挙し、種々の社会活動への参加経験のなかには「よいストレス」と「わるいストレス」の双方が含まれ、しかもそれが社会的、文化的規定性をもつことを具体的事例の検討を通して検討確認した。(2)経済開発や医療開発と住民のストレスとの関係についての研究をすすめた。(3)家族の経済的な豊かさや安定が人々の少ストレスの必要十分条件ではないことを奈良県南部の中山間地域の果樹栽培農家の事例を通して明らかにしつつある。そこでは果樹経営の世代間継承において果樹農家が解決を迫られている課題としていわゆる「ストレス」のないことが「ストレス」になっているというパラドクスを明らかにし、「よいストレス」を意識的に生み出していくことが課題の解決につながりそうだ、という方向で調査を継続中である。これはストレス解決の社会学モデルの設定に重要なヒントとなり得る。(4)災害、事故、死別等によってもたらされる家族ストレスの資料分析やストレスに対する癒しとしての葬送についての研究もすすめた。
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Research Products
(3 results)