2004 Fiscal Year Annual Research Report
非営利協同セクターによる市場と社会関係の再構築に関する実証的研究と中範囲理論の形成
Project/Area Number |
15530350
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
田中 夏子 都留文科大学, 文学部, 教授 (30257505)
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Keywords | イタリア / 社会的経済 / 社会的協同組合 / 生きにくさ / パートナーシップ / アソシエーション |
Research Abstract |
欧州各国では、非営利事業組織を主な担い手とする「社会的経済」を、日本に一歩先んじて制度化してきた。たとえばイタリアの場合、小規模で公共性の高い非営利事業組織の法的な認知を1991年に「社会的協同組合法」という形で実現し、以降、自治体が直営で担っていた様々な事業を社会的協同組合に委託する等の過程で、地域にとって最適な「協働」の形とは何かを、協同組合、労働組合、自治体の三者が関わりながら模索してきた。 現在、こうした流れが各地に定着したものの、成熟段階に達したがゆえの新たな課題も浮上している。たとえば、非営利事業組織に働く人々の仕事観が徐々にかつての公務員に類似してきたこと、非営利事業体が地域社会における独占事業者的な位置づけによって中小規模の事業者との摩擦が生じていること、すぐれた就労支援機能を持つものの障害者を受け入れる企業の側の整備が後手に回っていること等、「制度化」と「運動としての革新性」との両立に困難が生じていることも否めない。 こうした新しい課題にどのように対応していくべきか、地域ごとに特色ある模索が展開されている。本研究では、障害者雇用促進のための労働市場改革と、そこでの非営利・行政の協働関係を中心に、ラツィオ、ヴェネト、ロンバルディアの各州を事例として取り上げ、(1)制度化による硬直化からの脱却、(2)非営利陣営からのイノヴェイティヴな社会サービスの展開、(3)営利的企業への働きかけについて、行政関係者(労政局、雇用センター)、雇用開拓を担うB型社会的協同組合、協同組合の事業連合等にインタヴューを重ね、地域ごとの傾向を分析した。
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Research Products
(1 results)