2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530353
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田中 滋 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60155132)
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Keywords | ダム / 専門職者 / 環境 / 社会運動 / 公共事業 / 科学 / 流域委員会 |
Research Abstract |
本研究は、ダム建設という大規模公共事業にかかわる環境問題において、ダム建設推進や建設反対のそれぞれの立場からどのような専門職者がどのような主張をどのような社会的・文化的背景の下にどのような科学的枠組みによって展開し、どのような事柄が両者間で争点となってきたのか、またそれらをどのように人々に対してまたマスメディアに対して提示してきたのかを、ダム建設の戦後史を射程として歴史的にあきらかにすることを目的とする。 今年度は、一方では、特定のダム建設事業に研究対象を限定することなく、社会問題化したダム建設のケースを戦後の新聞記事を資料として幅広く収集し、他方では、大正末期から昭和初期にかけて社会問題化した小牧ダム建設問題(庄川事件)の調査と戦後比較的早期に建設された熊野川水系の各ダムに関する調査を関係者へのインタビューならびに各種資料・データの収集を中心におこなった。 庄川事件は水電企業と流筏林業との対立として展開したが、その対立は、当時<近代産業対原始産業>という図式の下で語られた。こうした構図の下でこの事件が語られたことがどのような専門職者や知識人の関与を生み出したのかをさまざまな文献資料からかなり明らかにすることができた。 この事件の調査から戦後のダム開発に対する専門職者や知識人のダム問題一般への相対的に冷ややかな対応の理由をもかなり明らかにすることができた。そして、環境的価値が前世紀末に社会的に重視されるまでダム問題が社会問題化しづらかったことのこれまで見逃されてきた理由をも発見できたのではないかと考えられる。
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