2003 Fiscal Year Annual Research Report
公共空間の秩序化の社会史〜街頭における監視システムの展開と問題点〜
Project/Area Number |
15530355
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
永井 良和 関西大学, 社会学部, 教授 (40207973)
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Keywords | 公共の秩序 / 監視 / 監視カメラ / 学校の安全 / 個入情報 / 街頭犯罪 |
Research Abstract |
平成15年度は、国内における街頭監視システムに関する資料の収集・整理に着手した。第二次世界大戦後を中心に、単行本・新聞雑誌記事の検索および収集を実施、また、戦前期についても、社会的機能の観点から現行の監視システムに先行すると見なされる諸制度に関するものを重点的に集めた。公共空間秩序の社会史的事実を年表化する作業は未完だが、今後の調査を通じてより充実したものの完成を目指す。日本においては金融機関や交通機関が防犯・安全のために設置した監視カメラが先鞭をつけ、90年代以後、とりわけ大阪教育大附属池田小事件への対応として、子どもたちの安全を守るべく郊外の住宅地や学校周辺で監視強化がすすめられた。また、外国人犯罪が増加しているという、必ずしも実態とはいいきれない言説が急速に重んじられ、あわせて街頭空間の危険が指摘されるようになった。この経緯は、研究を計画していた段階で予想されていたとおりだが、資料収集によって確認ができた。また近年では、国際社会の動向が日本の社会監視システムの構築に大きな影響を与えていることも明確である。さらに、住民基本台帳ネットワークや通信傍受法といった制度のスタート、セキュリティ強化のための個人認証システムの構築、市場におけるICタグの導入など、電子化社会における個人情報の管理問題が社会的な注目を集めるようになった。これらについての文献も収集整理した。いっぽう、これまでの研究活動をつうじて蓄積したデータ(街頭の秩序維持にかかわる法令その他の文献資料および街頭で撮影した監視のための装置・看板・通行者などの写真・スライド)をデジタル化し整理する作業にも着手した。この作業を継続することによって、近代以降の公共空間秩序の社会史を、現代にいたるまでのひとつづきのものとして再構成する段階にすすむ予定である。
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