2004 Fiscal Year Annual Research Report
国際比較調査における質問項目の翻訳等価性および特異項目機能の方法論的検討
Project/Area Number |
15530399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野口 裕之 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60114815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 亮 静岡大学, 人文学部, 助教授 (80300474)
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Keywords | 国際比較 / DIF分析 / 法意識 / M-H法 / IRT / 項目特性曲線 / 翻訳等価性 / 内容的等価性 |
Research Abstract |
今年度実施した研究による成果は以下のとおりである。 1 2004年度は、法意識(政治意識)に調査分野をしぼることとして、日本と米国のロー・スクールにおける法意識調査の中から、「法に関する観念尺度」の6項目を取り上げて、DIFの検討を行った。 2 「法に関する観念尺度」は具体的には以下の6項目から構成される。 #1 勤めている会社が不正をしても会社のために黙っておくべきだ。 #2 正義とぶつかるときでも個人の利益を追求すべきだ。 #3 国家の権威によって強制されるので人々は法に従う。 #4 法の厳密さにはかなわないから人々は法に従う。 #5 法律家の論理にはかなわないから人々は法に従う。 #6 法は国家が人々を統治する道具だ。 3 日本と米国の調査結果について、各項目毎にt検定を実施した結果、有意な差が見られたのは、#1、#2、#4であった。この差が実質的な差を表しているのか、そうでないかを検討した。例えば、#2では「正義とぶつかる」という表現が用いられているが、英語版では「conflict with the law」という表現であったため、この差は単に「翻訳」の問題であった可能性もある。また、#3および#6では「国家」に対して「government」という表現が用いられたが、これらの質問項目で有意差は見られなかった。これは、米国社会では「国家」という概念が社会的にあまり用いられず、「government」が多用されることから、語彙の対応を超えて内容的な等価性が保たれていた可能性がある。 Mantel-Haenszel統計量を用いてDIFの検討を行った結果、#2のみでDIFが検出された。すなわち、#2ではt検定による有意差をそのまま日米の差と解釈することができないということである。 2005年度は、これまで探索的にDIFの検討を行ってきた「尺度」に対して、複数のDIF検出法を適用して国際比較調査におけるDIF検出法の包括的な検討を実施する。
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