2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会的推論の観点からみた心理学的状況の意味と分類に関する研究
Project/Area Number |
15530403
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
外山 みどり 学習院大学, 文学部, 教授 (20132061)
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Keywords | 社会的認知 / 推論 / 人と状況 / 帰属過程 |
Research Abstract |
本研究では、従来の社会的推論研究で想定されてきた「人」と「状況」という枠組みを受け継ぎつつ、その中でも十分な検討がなされて来なかった「状況」の意味とその影響力に焦点を当て、心理学的状況の分類を試みた後、言語刺激とビデオ映像を用いた推論実験を行った。帰属過程をはじめとする社会的推論の研究においては、人の内的原因への帰属が過度に生じる傾向や他者の特性推論の自動性・重要性が指摘されてきたが、周囲の状況や環境内の事物に対する推論もまた重要であり、適応上の価値をもつと考えられる。社会的推論においてどのような状況要因が考慮に入れられ、どのような場合に状況の性質に関する推論が自発的になされるのかを明らかにすることは、研究上、重要な意味をもつ。本研究では、平成15-16年度に、諸状況に対する評定を求める質問紙調査を2種類行って心理学的状況の意味を探索した。各状況の評定に基づく因子分析結果では、「快活性」、「公式性」、「平穏性」という3因子を抽出し、クラスター分析によって各状況間の距離に基づく分類を試み、さらに多次元尺度法を用いて各状況の空間的な布置を導いた。平成17年度には社会的推論の実験に移り、言語的記述に基づく質問紙実験とビデオ映像を用いた実験室実験の両方を行った。質問紙実験では、行動から人の特性と状況の特性がどの程度推論されるかを検討するため、人の側の原因と環境・状況側の原因の両方が考えられるような行動8種類に対して、それぞれ人の特性と状況に対する直接的推論を求めたほか、人と状況の推論における割引原理の作用も検討した。結果では、人の側の特性推論が優勢な行動と状況側の推論が優勢な行動の両方があること、割引原理の作用にも行動の種類による差異が見られることが明らかになった。その後、教示を操作してビデオ映像を視聴させる実験を行い、状況に対する注意や記憶を含めて、推論に影響する要因を吟味した。
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