2004 Fiscal Year Annual Research Report
チョムスキー理論における完全解釈の原理を逸脱した文の文法性判断
Project/Area Number |
15530471
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
永田 博 岡山大学, 経済学部, 教授 (30093694)
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Keywords | 言語知識 / 文法性判断 / 完全解釈の原理 / 心理的実在性 / 二重目的語構文 / 句読法 / 強調 / 語順 |
Research Abstract |
Chomskyの完全解釈の原理を逸脱した日本語二重目的語構文(単文)を用いて,この原理の心理的実在性を検討した.句読法や強調,語順を統制した結果,母語話者の文法性判断はChomsky理論が予測する悉無律に従わず,これらの統制変数の影響を受けることが判明した.この事実は,この理論が想定する母語話者の言語知識が実際の母語話者のそれと異なることを示唆する. (発表論文1) たとえば,「社長が会社のトップが部下に指示を与えた」において,解釈不能な付加項(「会社のトップが」)を句読法(コンマ)で囲まない場合と囲む場合(「社長が,会社のトップが,部下に指示を与えた」)とで文法性判断を比較した.両文型はいずれも完全解釈の原理を逸脱しているにもかかわらず,コンマで囲まれた文型は囲まれない文型に比べて文法性判断値が上昇した.この現象は,付加項の文法的役割(主語,間接目的語,直接目的語)とは無関係に生じた. (発表論文2) 1.「社長が社長が部下に指示を与えた」のように付加項(2番目の「社長が」)が正規項(1番目の「社長が」)の反復であるような文型を用いた.この付加項に強調を加えた場合(「社長が社長が部下に指示を与えた」)と加えない場合(アンダーラインを欠く)とで比較したが,両文型の文法性判断に差はなかった. 2.「指示を部下に社長が社長が与えた」と「指示を部下に社長が社長が与えた」と語順を変えて検討した.この操作によって,同時に,文法性判断に及ぼす原因が付加項の文法的役割(主語,直接目的語)にあるのか,あるいは語順にあるのかも検討した.その結果,(1)後者の文型で強調の効果が得られた,(2)両文型において,付加項が直接目的語である場合の文法性判断値が主語である場合に比べ高かった,(3)後者の文型が前者の文型に比べ文法性判断値が低かった.
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Research Products
(2 results)