2004 Fiscal Year Annual Research Report
前頭連合野における記憶機構の大脳半球機能差に関する実験神経心理学的研究
Project/Area Number |
15530472
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
永江 誠司 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20108418)
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Keywords | ワーキングメモリ / Goldman-Rakic仮説 / 認知的偏向テスト / リーディングスパンテスト / 時間的順序記憶 |
Research Abstract |
平成16年度の研究において検討したのは、Goldman-Rakic(1994,2001)によって提唱されたワーキングメモリに関するGoldman-Rakic仮説である。ワーキングメモリとは,状況の変化や作業の進行に伴って刻々と入ってくる情報や長期記憶から取り出した情報を一時的に保持し,作業が終わると消去される記憶である。このワーキングメモリの形成,維持,消去に前頭連合野が関与しているというのが,Goldman-Rakic仮説である。 前頭連合野の記憶機構として提唱されたGoldman-Rakic仮説にかかわるワーキングメモリの大脳半球機能差に関して,認知的偏向テスト(CBT)とリーディングスパンテスト(RST)を用いて検討した。認知的偏向テストにより,左前頭連合野優位型と右前頭連合野優位型に分けて,リーディングスパンテストによって測定されるワーキングメモリを比較した。その結果,右前頭連合野優位型が,左前頭連合野優位型よりワーキングメモリ能力の高いことが示された。言語性のワーキングメモリを測定するリーディングスパンテストにおいて,右前頭連合野優位型が左前頭連合野優位型より得点が高かったことは,ワーキングメモリに大脳半球機能差のあることを示すとともに,右前頭連合野が何らかの形で言語性のワーキングメモリの促進に関わっていることが示唆された。 さらに,左右前頭連合野の機能に関係する言語性と非言語性の時間的順序の記憶と,言語による行動調整機能との関係を検討した。その結果,言語性の時間的順序記憶力は言語による行動調整機能と関係し,非言語性の時間的順序記憶能力は関係しないことが示された。これらの結果は,言語の行動調整機能に関して,前頭連合野に半球差のあることを示している。 以上の研究により,Goldman-Rakic仮説にかかわるワーキングメモリの大脳半球機能差のあるにとが示されたといえる。ワーキングメモリの半球差に関する機能的内容については,今後さらに明らかにする必要がある。
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Research Products
(1 results)