2004 Fiscal Year Annual Research Report
色-形の知覚と美的判断-実験現象学と実験美学の統合をめざして-
Project/Area Number |
15530476
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
野口 薫 日本大学, 文理学部, 教授 (00009367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 有史 日本大学, 文理学部, 助手 (30366546)
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Keywords | 色 / 形 / 美的判断 / SD法 / 感覚間相互作用 / 運動視 |
Research Abstract |
形と色の組み合わせについての美的判断(以下、形と色の対応性と呼ぶ)を規定する要因については能動性など形と色の感情効果の類似とする説(Kandinsky,1926)や、形と色の評価の加算であるとする説(e.g.,中野,1972)、知識からの類推(Jacobson,2002)など諸説ある。本研究は系統性のある抽象図形と色を組み合わせた図形について、SD法による感情効果の測定、および評定尺度法による対応度の測定から検討を行い、これらの仮説を総合的に検証した。その結果、軽明性・活動性の類似が対応性と関係するというKandinsky(1926)の説を支持する結果を得た。また、同様の刺激について一対比較により美的判断を測定した研究においてもKandinsky(1926)を支持する結果が得られた。これらのことから形と色における軽明性・活動性といった感情効果の類似が形と色の対応性に強く関係することが示唆された。 感覚間相互作用については以下の5つの現象を見出した。第1に音のラウドネス変化が視覚的な奥行き運動知覚に影響すること、第2に触覚が幾何学的錯視に与えること、第3に時間知覚における視覚が聴覚に与えること、第4に仮現運動のスピードが聴覚刺激の方向にバイアスされて知覚されること、第5に評価対象感覚と背景感覚の情報の乖離が小さい場合には、同化方向の影響が見られるが、大きい場合には対比方向の影響が見られることである。 運動視知覚については、観察する運動パターンの加速度が運動の知覚に大きな影響を与えていることと、剛体運動だけではなく、非剛体の運動もわれわれにとって外界を表象する解のひとつであることを示唆した。さらに、これらの知覚現象は、ゲシュタルト理論の一つである最小原理に基づいていることを考察した。
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Research Products
(13 results)