2005 Fiscal Year Annual Research Report
市制町村制期における行政村の就学勧奨及び小学校運営に関する実証的研究
Project/Area Number |
15530485
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
谷 雅泰 福島大学, 人間発達文化学類, 助教授 (80261717)
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Keywords | 就学勧奨 / 小学校運営 / 就学率 |
Research Abstract |
本年は最終年度に当たり、研究成果のまとめをおこなった。まず最初に、『文部省年報』により、各府県別の就学率、学級数、教員数、学校ごとの学級数を1895年から1904年までまとめてグラフ化した。その結果、比較的就学率の低かった青森県と、全国平均を上回っていた長野県、福岡県を比較して報告書としてまとめることとした。そのうち、まず青森県については、1896年に着任した牧朴真知事の行動に注目した。牧知事は、「全国最低」ともいわれた青森県の就学率を上昇させるべく努力をおこなうが、青森県の政治風土もあり議会とするどく対立して翌年には転任することになる。その間、1897年1月4日の勅令第2号「市町村立小学校教員俸給ニ関スル件」により、教員の俸給額を決定するのは県知事の権限となったことを受けて、牧は良質の教員を得るべく教員俸給額を全国平均まで引き上げようとするが、そのための追加予算をめぐって弘前市議会では反対が起こる。その対立をめぐっては地方紙も市会に同調し、「地方の事情」を見ずに県が教員俸給額を押しつけていると批判している。また、青森市ではこの時期、経済的困難から就学できない子どもたちを私学が引き受ける形で、いわば「貧民教育」を私学に放置していた。次に長野県は、比較的就学率がよい県ではあったが男女差が激しく、男子の就学率が女子の倍という大きな開きがあった。長野県について、実質的な就学率がどの程度であったか、『文部省年報』による就学率を「相対化」するために、役場資料にもとづいて独自に検証をおこなったが、その結果『文部省年報』の数値にほぼ等しいことが明らかになった。最後に、就学率の高かった福岡県について、町村や教員、教育会が就学勧奨をおこなっていたようすを明らかにした。
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