2003 Fiscal Year Annual Research Report
教育詩学(ポイエティーク)による「現場」のテクスト分析-教育を語る言葉の再生-
Project/Area Number |
15530503
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 晶子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (10231375)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弘田 陽介 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員
皇 紀夫 大谷大学, 文学部, 教授 (40077392)
小野 文生 京都大学, 教育学研究科, 助手
|
Keywords | 教育詩学 / テクスト / 現場 / ロマン主義 / レトリック論 / 終末期医療 / 京都学派 / 臨床 |
Research Abstract |
教育研究および教育一般を言語が使用される「現場」として見立て、そこで使用される言葉の働きを解明することを通して、言葉が紡ぎだす意味生成の力の有り様とその発現様態を明らかにするという本研究の今年度における研究実績は以下の3点に集約される。 1)国内外の典型的な教育テクストのなかから、鈴木は主に京都学派、とりわけ三木清のテクストにみる語りのスタイルを解明し、そこに西洋哲学的思考様式と東洋に伝統的な思惟形式との交叉、さらにその交叉が生み当す新たな意味生成の力について明らかにした。小野はドイツ・ロマン主義とりわけヘルダーのテクストを中心に弁証法的仲介とは異なる二項対立の解決法に着目して解明を進めた。弘田はカントのテクストを、啓蒙運動期における著者と読者のコミュニケーションを通して形成される理性の裁判所という舞台として再構成することを行った。 2)実際の語りの「現場」として、今年度は終末期医療のさまざまな場面において、例えばリヴィング・ウィルの作成や、がんの予後告知において、これまで自明の前提とされてきた自律、自己決定、代理可能性といった近代特有の責任体系でいうところの基本概念が、その有効性を改めて問われている現状を、鈴木はそうした語りのスタイルの分析を通して解明した。また、教育における死や生をどう語るかという関心から、教育哲学会において企画したシンポジウム「死ぬこと・生きること-教育のなかの風景」について、皇は指定討論者の立場から、生死をめぐる議論を単に立場の相違から評価づけするのではなく、語りのスタイルとして見立てることを通して、議論の質を高めていく技法の必要について明らかにした。また、鈴木、小野、弘田は、このシンポジウムの録画をもとにしながら、そのシンポジウム自体をテクストとして見立て、語り分析を行った。 3)鈴木、小野、弘田は共同発表形式で、COE京都大学心理学連合主催ワークショップにて認知科学に対する教育詩学の可能性を提案した。また、上記1)、2)の二種類の「テクスト」をレトリック論を用いて分析・解読することを通じて、現代における教育言説の新しい形態を創出していく技法の学として、教育詩学の学問としての可能性を提示する可能性について鈴木、皇は臨床や実践といったキーワードから解明を進めた。 以上の実績は中間報告書としてまとめた。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 皇 紀夫: "二宮尊徳随意"教育哲学研究. 第88号. 101-111 (2003)
-
[Publications] 小野 文生: "Die Kunst der Ubersetzung bei J.G.Herder : Poiesis des Ursprungs der Sprache?"Herder-Studien. Bd.10. (2004)
-
[Publications] 弘田 陽介: "カントに触れる技"近代教育フォーラム. 第13号. (2004)
-
[Publications] 鈴木 晶子(編著): "科研中間報告書 教育詩学(ポイエティーク)探求I"(2004)