2005 Fiscal Year Annual Research Report
教育詩学(ポイエティーク)による「現場」のテクスト分析-教育を語る言葉の再生-
Project/Area Number |
15530503
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 晶子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (10231375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
皇 紀夫 大谷大学, 文学部, 教授 (40077392)
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Keywords | 教育詩学 / テクスト / 現場 / レトリック / メタファー / 臨床 / ドイツ観念論 / 死生 |
Research Abstract |
本研究は、人間が生成・変容することをいかに語るかという問題意識・まなざし・言説の集蔵体として教育学は成立してきたとの理解に立ち、教育研究および教育一般を言語が使用される「現場」として見立て、そこで使用される言葉の働きを解明してきた。またその見立て自体の作用の解明や、語る者の個人的かつ集合的・構造的「まなざし」が成立してくる力学を分析対象としてきた。本年度、鈴木は、研究協力者の小野文生、弘田陽介とともに教育思想史学会においてコロキアム「啓蒙『と』教育」を企画・発表した。啓蒙と出自を同じくしながらその出自を隠蔽しようとしてきた教育学の、啓蒙とのねじれた関係を現代の問題として再考する必要があるとの問題意識から、その「ねじれ」がどのように教育学の理論・概念・言説として形づくられて来たかを教育詩学の立場から考察した。また、鈴木は教育哲学会第48回大会シンポ「教育にとっての心・生命」において、近代教育学における心や生命、死の扱いを、私たちが切り捨てたつもりになってなお引きずっている「教育学のしっぽ」として論じて見せた。またドイツ・歴史的人間学会(ベルリン)の「暇」をテーマにした学際研究シンポ、ドイツ教育学会第20回大会(フランクフルト)の「儀礼的な学習文化」のシンポ、「身体・メディア・想像力」国際会議(米国アーヴァイン)のシンポにおいて、シンポジストとしてそれぞれのテーマに対する教育詩学のアプローチを発表した。 今回の科研の成果の締めくくりとして、鈴木、皇は、これまでの研究協力者とともに、叢書KonTakt第一巻『これは教育学ではない--教育詩学探究』を冬弓舎(京都)より刊行した。鈴木は編著者として教育詩学のコンセプトをさまざまなテーマに応じて論じており、皇は教育学理論と日常の語りをつなぐ視点をレトリックの働きに見出しつつ、教育学における臨床知の問題を分析し独自の「臨床教育学」を提唱した。今後この研究叢書はシリーズ化し、これまでの実績を含めさらなる成果を著書の形で一般向けに発表する予定(第二巻は『あわいの<詩>学』(鈴木著)として近刊)。
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Research Products
(8 results)