2003 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代の母子イメージと家庭教育に関する比較史的研究
Project/Area Number |
15530510
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小玉 亮子 横浜市立大学, 商学部, 助教授 (50221958)
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Keywords | 母の日 / 1920年代 / アメリカ / ドイツ / 政治 / 家族 |
Research Abstract |
今年度は、資料収集とその整理、および、比較社会史の方法論(先行研究の再検討を含む)に関する再検討を中心に行った。 まず、これまでの研究実績をふまえて、また、これからの調査のマトリクスを描く準備として、『横浜市立大学論叢』に"A Comparative History of Mother's Day in the U.S., Germany, and Japan"を発表した。この論文においては、1920年代の母子イメージを検討する素材として、「母の日」の制度化に注目し、そこで、アメリカ・ドイツ・日本それぞれにおいて、「母の日」が極めて政治的メッセージの普及に有益であったことを明らかにした。この論文では、各国での概要を述べたのにとどまるが、それぞれの国々での違いを見ていくうえでの整理ができた。そのなかで、ドイツに関しては、特に注目されるものとして、「子だくさん家族全国連盟」について言及した。これに関しては、さらに、3月に「ドイツ現代史研究会」例会において、ワイマール期にこの団体が果たした役割とその変貌についての報告をおこなった。研究会では多くの有意義なコメントが得られ、特に政党との関係でさらなる分析が必要であることがあきらかになった。これについては、ベルリンの連邦文書館に資料が保存されているので、科研の研究期間内で資料調査に行くことを予定している。 また、アメリカに関しては、議会資料を中心に分析し、さらに3月には、不足の資料を収集し、意見交流するため渡米した。ミネソタ大学のウィルソンライブラリーでの資料調査とあわせて、リベラルアーツカレッジのメインズ教授および、マーフィー助教授と意見交換し、非常に有益な知見が得られた。しかし、短期の滞在であったために、資料収集に限界があり、渡米によって、アメリカの母の日に関して重要な役割を演じた合衆国下院議員であったヘフリン氏の資料について十分な収集ができなかったので、また、これについては、やはり科研の研究期間内で、ヘフリン氏に関する資料が収集されているアラバマ大学に資料収集に行くことを予定したいと考えている。 理論的な枠組みの検討に関しては、比較史・および社会構築にかんする方法論を先行研究から学ぶ作業をさらに進めたが、これに関連して、母子イメージをとらえる概念整理のために、『児童心理』誌上に論文「『子どもが求めている母親像』を問い直す」を発表した。これは、母親のイメージが、どのように構築されているのか、特に、それらが子どもからの発言という形で発表されることの意味を検討したものである。ここでの分析を生かして、「母の日」について、どのような議論が構築されているのかをさらに明らかにしていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ryoko Kodama: "A Comparative History of Mother's Day in the U.S., Germany, and Japan"The Bulletin of Yokohama City University. Vol.54, No.2/3. 57-69 (2003)
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[Publications] 小玉 亮子: "『子どもが求めている母親像』を問い直す"児童心理. No.793. 38-42 (2003)