2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530512
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 卓治 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 助教授 (50230694)
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Keywords | 公立大学政策 / 文部省八年計画書 / 学制改革 / 時局ニ関スル教育資料 |
Research Abstract |
今年度は、資料の収集と整理に終始した。まず文部省関係の資料としては、外務省外交史料館所蔵において「文部省八年計画書」および『時局ニ関スル教育資料』の作成過程を示唆する文書資料を入手したほか、東京都公文書館で大学令による私立大学設置の際の基本財産および専任教授に関する要件にかかわる文書を複写した。また、国立国会図書館憲政資料室では牧野伸顕文書などの調査を行った。並行して1900年ごろから1920年ごろまでの教育行政に関する文献を調査・収集し、その時期の新聞も一部収集した。 一方、内務省関係では国立国会図書館憲政資料室において江木千之文書を調査したほか、内務官僚関係の文献、地方制度(府県制度)および地方財政にかかわる文献を収集し、加えて府県の財政実態を把握するために『日本帝国統計年鑑』により府県別の財政に関する基礎的なデータを整理した。なお政党関係の資料では、政友会関係の文献を一部収集するにとどまった(必要文献の所在は確認しつつある)。 収集した資料の本格的な分析は来年度において実施する計画であるが、当面の課題は、1918年に制定される大学令およびそれに関連する諸規程、諸通牒のなかに実体化する公立大学政策が析出されてくる過程を明らかにすることである。そのために1900年前後から1910年代において文部省のいわゆる「国家教育権思想」が崩れ、一方で曲折を経て大学の増設が要請されていく論理を、「文部省八年計画書」の「挫折」から、その後の国内的変動(財政問題、政党の台頭)および国外環境の変動(第一次大戦による総力戦の登場)を背景にした文部省の高等教育に関する政策動向の展開のなかに探っていく予定である。
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