2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530512
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 卓治 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 助教授 (50230694)
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Keywords | 公立大学 / 地方自治体 / 専門学校令 / 大学令 / 教育調査会 / 臨時教育会議 / 文部省八年計画 / 政務調査委員 |
Research Abstract |
(1)初等教育機関は市町村、中等教育機関は府県、高等教育機関は国家が設置・維持するべきとする「学校段階別設置主体区分論」や「国家教育権思想」に基づき、文部省が1899年に策定した、いわゆる「八年計画」の高等教育機関増設計画に関する内容を検討し、この計画がもともと破綻しており、たとえ閣議で決定されていたとしても現実の中学校卒業者の増大に対処することは不可能であったことを実証した。そのうえで、この破綻・挫折を受けて1900年ごろ文部省が教育機能のみをもつ高等教育機関の設置を地方自治体にも認める方向に政策転換したことを示した。 (2)1902年に行政整理のため桂太郎内閣に設置された政務調査委員に関する史料を検討し、同委員の調査方針および調査報告を示す史料を同定した。そのうえで、その政務調査委員の報告と文部省の独自案から折衷的に析出され、1903年に閣議決定された「学校系統案」を土台にして専門学校令が制定されるまでの過程を検討した。その結果、この過程において地方自治体を高等教育機関(専門学校)の設置主体とすることに対する原理的な阻害要因(「学校段階別設置主体区分論」)がすでに失われていたことを明らかにした。 (3)教育機関であり、研究機関でもある大学の設置を地方自治体にも認めた大学令の制定過程において、地方自治体の例外的規定(第5条)がどのように成立したかということについて、教育調査会および臨時教育会議にかかわる史料の分析を通して検討した。その結果、第5条が「学校段階別設置主体区分論」に基づくのではなく、総力戦としての第一次大戦を契機とした研究機能の重視と、政党勢力の伸張を背景とした地方財政負担増大への懸念とのジレンマを軽減・解決するために挿入されたことを明らかにした。
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Research Products
(1 results)