2003 Fiscal Year Annual Research Report
特色ある高校学科の教育内容の職業的・社会的レリバンスに関する研究
Project/Area Number |
15530538
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 由紀 東京大学, 大学院・情報学環, 助教授 (30334262)
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Keywords | 特色ある高校 / 専門高校 / 農業高校 / 工業高校 / 教育課程 / レリバンス / 学科改編 / 地域の産業構造 |
Research Abstract |
15年度は、16年度以降に実施する質問紙調査の前段階として、職業に関連する特色ある教育課程を提供している県立高校に対する訪問調査を実施した。訪問先は、新潟県の加茂農林高校、長岡工業高校、海洋高校および熊本県の球磨工業高校、菊池農業高校、阿蘇高校の6校である。 調査から得られた主な知見は次の通りである。第一に、これらの専門高校が特色ある教育課程を開設するに至った経緯は、知事の意向、教育委員会からの指示、高校自身の発意など多様だが、学科改編の理由自体は、志願者数や人気の低下と、産業内部の変化への対処という二点にほぼ集約される。第二に、農業系の専門高校の事例においては、米作と畜産を主とする農家の後継者養成という従来の教育目的を脱し、ガーデニングや愛玩動物など生徒の興味関心に対応するとともに、環境問題など大きな視野に立った学科改編に取り組み、かなりの成功が収められていた。第三に、工業系の専門高校の二事例においては、各地域の環境に応じて方向性を異にする取り組みがみられたが、一方は女子生徒の増加による学校全体への良好な影響、他方は「不易流行」の理念に基づく凝集性の高い教育の提供という形で、それぞれ個性ある教育課程への転換に相当に成功していた。第四に、しかし意欲ある試みが結実しない事例も見られた。たとえば、地域の短期的な経済・産業情勢に即応して学科改編がなされた場合には、地域の状況がその後に変化することで、当初の目的が喪われる危険がある。また、高校がいくら改革に務めても、立地条件や中学側の理解不足などにより、資質や適性の点で適合性の高い生徒が確保できない場合には、教育効果には限界がある。 限られた事例からではあるが、レリバンスの高い教育課程をデザインする際には、教育内容の普遍的・陶冶的側面を重視し、強固な教育理念を初発の段階で構築しておくことが成功の重要な条件となることが推察される。
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