2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における地方名士の形成―北陸地方の中等教育からみた社会移動分析―
Project/Area Number |
15530555
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
井上 好人 金沢星稜大学, 経済学部, 助教授 (30319032)
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Keywords | 地方名士 / 社会階層 / 中等教育 / 社会的性格 / 教育戦略 / 社会移動 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
本年度は、石川県立第一高等女学校の『学籍簿』と『学級台帳』の新資料を発見し、それの分析に力を注いだ。同校は明治期における石川県名士の子女が通う女学校であり、同資料の分析は当時の名士たちの階層的な特徴をはじめ彼らの社会的ネットワークを解明する重要な手がかりを与えてくれるからである。その結果次のような知見が得られた。 1 人口1万人あたりの輩出率から、農村部(郡部)からの輩出率は「金沢定住土族」のおよそ40分の1にすぎず、同校は金沢に住む旧加賀藩ゆかりの士族と他府県からの移住者の子を中心に、次いで金沢の平民・商工自営業者の子弟が中心の学校であった。また、新中間層の占める割合が旧中間層と拮抗している(共に38%の占有率)ことから、都市型の中高等教育機関の親職業傾向と同じくしている。またこの階層構成は、明治期を通して変わらず他の新たな層からの参入などのドラスティックな構成変化は見られない。 2 経済ストックの面からみれば、利用層はある一定程度の財産を保有した階層が支配的で、判任官レベル以上の官公吏層、資本を保有する商工自営業者層、農村部の有力地主層が標準であった。しかし、医師や僧神官などの専門職層や、決して富裕とはいえない士族層からも一定程度の参入が見られる一方で、"庶民"(労働者や農民)からの参入が例外的な現象としてさえも全く見られないことに着目すれば、経済ストックの量だけでは推し量れない教育観や文化的エートスの階層間の断絶が顕著であったことが推察できる。 3 女学校利用層は旧制中学校利用層との関係が深く、他の実業系や師範系の中等教育利用層とは一線が画されている。
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Research Products
(1 results)