2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における地方名士の形成-北陸地方の中等教育からみた社会移動分析-
Project/Area Number |
15530555
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
井上 好人 金沢星稜大学, 経済学部, 助教授 (30319032)
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Keywords | 社会的性格 / 士族 / 教育観 / 社会的ネットワーク / 社会移動 / 郷友会 / 学歴エリート / 地方名士 |
Research Abstract |
本研究は、石川県を中心とする北陸地方(旧加賀藩)において、明治期の旧制中学校や高等女学校など名門中等教育機関を利用した階層の社会的性格を分析したものある。地方の中等教育機関の担った地方-全国(あるいは中央)間の人材選抜・配分機能や階層構造の変動のみならず、『学籍簿』や各種名簿類に着目し、個別プロフィールを包括的に調査分析することで各階層間の教育観や文化的エートス、地方-全国を結ぶネットワークの様相の特徴を把握しようする本研究の試みは、これまで十分には行われてこなかったゆえに意義あるものである。データベース化した主な名簿類は、金沢第一中学校、金沢第一高等女学校、加越能郷友会会員名簿である。これらの分析から次のようなことが明らかになった。 (1)女学校利用層と旧制中学利用層とは大部分重複しており、この層が当時の地方名士層として、実業系や師範系の学校利用層とは一線を画していた。とはいえ、学問や教養、趣味に対する考え方の点において、士族/平民、公務自由業層/自営業層といったレベルでは各層に少なからざる温度差があった。(2)中央へ流出した学歴エリートの組織である加越能郷友会には、藩政期以来の家柄町人を中心とする"老舗"実業家層や士族系実業家層も加わっていたが、新興実業家層は入会しない傾向がある。地方-中央を結ぶ名士たちの社会的地位を超えるネットワークは明治期において強い絆で機能していたが、学歴社会の進展に伴い「同郷」アイデンティティもその定義づけに腐心し、次第に学閥や職能集団に基づくネットワークへと収斂していくのである。
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Research Products
(2 results)