2003 Fiscal Year Annual Research Report
中高一貫教育における数学科のカリキュラム構成に関する研究
Project/Area Number |
15530559
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
久保 良宏 北海道教育大学, 教育学部旭川校, 助教授 (80344539)
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Keywords | 中高一貫教育 / 数学科カリキュラム / 教師調査 / 数学の有用性 / 数学教育史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、数学科のカリキュラム構成を、公立学校においても着目されている中高一貫教育の形態に焦点をあて、これを最良の方法で実現する上で解決しなければならない問題点を明らかにし、最終的には、公立学校における数学科の中高一貫教育カリキュラムを開発することにある。本研究ではカリキュラム構成を検討する視点として、「文化」「杜会の要請」「学習者の特質」に、「教師の教育観」「教育の変遷」を加え、(1)「文化としての数学(数学の系統性)」,(2)「数学の社会的有用性」,(3)「数学に対する生徒の実態」,(4)「数学科教師の数学観・数学教育観」,(5)「数学教育史」の5つから中高一貫教育における数学科カリキュラムについて考察することにした。 3年計画の1年目である平成15年度は、上記(1)(2)(5)に関連する教育史,中高一貫教育,数学科カリキュラム,数学教育史等に関する文献研究,(4)に関する数学科教師の実態についての調査問題の開発,(3)(4)に関連する中高一貫教育校における授業の実際に関する調査等を計画した。文献研究では,特に教育史から中高一貫教育を捉えようと考え,戦後の「新制中学校高等学校」,「六・三・三制」の考え方における中高一貫教育等について検討したが,戦後の中等教育は戦前の旧制高等学校の考え方を改め,中学校と高等学校を関連づけて捉えている一方で,子どもの発達から中と高を三・三に分けて捉えるという考え方も重要な意味を持っていたこと,また戦前の官立7年制中高一貫教育校として存在した東京高等学校について卒業生に対するインタビュー調査を含めて考察したところ,大正から昭和にかけての当時の中高一貫教育校においては,高等学校への入学試験がなかったことから受験を意識することなくアカデミックな教育が行われていたものの,生徒の中にはエリート的意識が強かったといった実態を知ることができた。また,数学教育史の検討からは,特に明治から戦後直後にかけての代表的な数学教育論に着目したが,数学者・教育学者・数学教育研究者という3つの立場から数学教育の理念・目標を見ると中高の関連は可能であるが,これをどのような数学内容で具体化するかについては数学の系統性だけに着目すことは危険であると考えられる。 一方、本研究の極めて重要な位置を占める教師調査では,当初は小・中・高・中高一貫の4種の比較から学校種の特徴を明らかにしようとしたが,小中高の実態は筆者のこれまでの調査を用いることとし,その代わりとして全国の国公私立における中等教育学校を含む中高一貫校(平成15年度)の数学科教師に対して,数学科主任調査と数学科教師調査の2つの調査用紙を開発,印刷した。来年度5月に全国約700校の約4500名の教師を対象に調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)