Research Abstract |
本研究の目的は,ニュージーランドの社会科を分析することにより,日本の「見方・考え方」を再構築することを目的としている。その目的をふまえた今年度の知見は,井田仁康:「ニュージーランド社会科における国際理解教育とそのスタンス」(国際理解教育学会「国際理解教育」Vol.10)で主として示される。それは,日本の社会科の学習内容が現在の社会システムの理解に重点をおくため,「基礎・基本」を知識,理解と解することが多いのに対して,ニュージーランドの社会科では,社会科が変化し,それに対応する子どもの育成が目指されているので価値判断,意思決定が重視され,それにより「基礎・基本」はスキルにあることを明らかにしたことである。日本の社会科でも態度形成として価値判断,意思決定が重視される傾向にあるが,学習内容のめざすものが変わらない限り,態度形成をめざした社会科の発展は望めないことが,この研究から示唆された。 一方で,日本の社会科,特に地理教育ではGISを導入することにより態度形成の育成を図ろうと試みている。その事例を8月にイギリス グラスゴーで開催された国際地理学会で研究発表し,発表論文にまとめた。歴史,公民の分野では,「公共性」といった視点から,社会科の「見方・考え方」について研究を進めた。「公共性」を私的空間と明確に判別することにより,現在の子どもたちの「見方・考え方」をより一層深められることが示された。それらは日本社会科教育学会「社会科教育研究」に公表した。 ニュージーランドの現地調査に基づいたスキルを中心とした学習を,学校レベルで分析しており,日本での調査事例と比較しながら学会誌に発表する準備を進めている。すでに骨子については,今年度の日本地理教育学会の研究大会で発表している。このように,本研究は研究計画通りに進められている。
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