2004 Fiscal Year Annual Research Report
美術鑑賞におけるレパートリーの分析とそのスキル習得のための教材開発
Project/Area Number |
15530565
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
石崎 和宏 宇都宮大学, 教育学部, 助教授 (80250869)
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Keywords | 美術鑑賞 / レパートリー / スキル / 教材開発 / 美術教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、視覚美術に対する美的感受性の発達の特徴の解明を進め、さらにその発達的知見から学習の適時性に注目して、美術鑑賞におけるさまざまなスキルを習得する教育ソフトウェアを開発し、その有用性と課題を検証することである。 本年度は研究の第二段階として、鑑賞レパートリーの視点を取り入れた発達モデルの理論的構築を図りつつ、美術鑑賞におけるレパートリーのスキルを効果的に習得するソフトウェア教材の改良を進めた。具体的には以下の成果を得た。 第一は、美術鑑賞に関するレパートリー理論の構造を明確化した。構造化に際しては、レパートリーの枠組みにおける六つの鑑賞行為(連想、観察、感想、分析、解釈、判断)それぞれに三つのレベルを設定し、定義の検討と調査データからの根拠づけを行った。三つのレベル設定に際しては、特に連想と観察ではHousen, A.(1983)、解釈ではBarrett, T.(2003)、判断ではWilson, B.(1966)のそれぞれの先行研究をふまえて明確化した。同時にこの構造を基に鑑賞文の分析方法を開発し、その妥当性と信頼性を検証した。 第二は、美術鑑賞を支援するソフトウェア「アートリポーター」の内容とインターフェイスを改善した。さらに、「アートリポーター」によって作成された鑑賞文と、使用しない鑑賞文を比較分析して、鑑賞スキル習得の効果を大学生と大学院生の事例で考察した。その結果、「アートリポーター」は、学習者に解釈や分析、観察の鑑賞行為を強く意識させる効果が示唆された。ただし、その効果は、鑑賞者の特性によって異なるものであった。今後、熟達度などの背景要因との関連についてさらに検証が必要であり、例えば、初心者群と熟達者群での比較や、小学生から高校生までを対象とした分析からの検証が課題となった。 なお、本年度の研究成果は、第27回美術科教育学会(千葉大学)において発表した。
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Research Products
(1 results)