Research Abstract |
最終年度である本年度は,微分可能性と極小集合との関係,および,曲面への群作用の極小集合について研究を進めるとともに,これまでの研究のまとめを行った. 微分可能性と極小集合との関係に関しては,新しい例の構成を行った.局所連結な極小集合を持つ曲面の微分同相写像としては,マックシュビンゲンが1990年代に初めて例を構成した.これは,双曲型微分同相写像の強不安定葉層構造を丸く切り開くことにより巧妙に作られており,構成を一般化させることが難しく,またできた微分同相写像の構造も解析しにくいものであった.そこで,力学系的な構造がわかりやすい部分擬双曲力学系を使い,連続的変形可能な例を構成した.極小性の証明のために,最先端の理論を駆使しないといけないという点で,改良したといえるかは微妙であるが,これまで一つしか見つかっていない例を,大量生産できることにはつながった. 一方,曲面への群作用については可解群の作用の例外極小集合について研究した.これまでの研究で,巾零群の作用の場合は,極小集合がシェルピニスキ曲線と同相にならないことが証明されている.また,双曲群の場合は極小集合としていろいろな形のものができることが知られている.そこで本年度は,可解群,特に,円周上のトーラス・バンドルの基本群について研究した.結果として,円周上のトーラス・バンドルの基本群の曲面への作用は,局所連結な連結例外極小集合を持たないことを示した. 研究全体のまとめとして,力学系における例外極小集合を特徴づけるため,双曲群の作用における例外極小集合と比較した.その結果,力学系の可換性が極小集合の複雑性と密接に関係していることがわかった.
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