2004 Fiscal Year Annual Research Report
構造化個体群動態モデルの数学的理論とその応用に関する研究
Project/Area Number |
15540108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 寿 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (80282531)
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Keywords | 感染症モデル / 年齢構造 / 基本再生産数 / 閾値定理 / 分岐 / HIV / AIDS / SIRモデル |
Research Abstract |
[1]年齢構造をもつホスト人口におけるSIR型の感染症の流行モデルを考察した。ホスト人口は安定人口であると仮定され、垂直感染も考慮に入れる。我々は半群アプローチによって基礎モデルの適切性を証明し、ついで基本再生産数がある正値積分作用素のスペクトル半径で与えられることを示した。基本再生産数が1以下であれば、感染のない定常状態が大域的に安定となり、1より大きければ自明な定常解は不安定化してエンデミックな定常解が前進分岐によって現れる。感染力が十分に小さい範囲では、エンデミックな定常解は局所漸近安定であることが示された。 [2]年齢構造をもつホスト人口におけるMSEIR型の感染症の流行モデルを考察した。ホスト人口は安定人口であると仮定され、垂直感染は存在しないが、母親由来の免疫によって幼年個体は感染を免れると仮定される。我々は半群アプローチによって基礎モデルの適切性を証明し、ついで基本再生産数を計算した。基本再生産数が1より小であれば、感染のない定常状態が大域的に安定となり、1を超えれば自明な定常解は不安定化してエンデミックな定常解が少なくとも一つ現れる。エンデミックな定常解の一意性は一般に確立できないが、制限的な十分条件を導いた。感染力が十分に小さい範囲では、エンデミックな定常解は局所漸近安定であることが示される。 [3]HIV/AIDSの流行に関する年齢と感染持続時間をパラメータとする構造化人口モデルの開発をおこなった。同性集団への侵入条件を基本再生産数によって定式化したうえで、感染力の形態によっては、定常解の後退分岐が現れ、複数のエンデミックな定常解が存在しうることを示した。また分岐パラメータを導入して、リアプノフーシュミットタイプの議論によってその安定性についての考察をおこなった。また感染力が与えられた場合における再生産比(有効再生産比)を導入して、複数均衡が現れる条件を考察した。
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