Research Abstract |
本研究では,競争関係にある生物の個体群密度の動態を記述するLotka-Volterra型競争系を考察し,その正値定常解の存在,安定性および大域的な分岐構造を調べることにより,生物の共存メカニズムの解明を目標としている.これまで,生物の住処が区間の場合に,数学的な手法と,数値計算や数値的検証法などの数値的な手法を相互補完的に用いて,正値定常解の大域的な分岐構造を調べてきている. 今年度は,生物の住処が2次元または3次元の領域であることを考慮して,住処を球の内部領域とし,回転対称性をもつ正値定常解の分岐構造を調べることとした.住処が区間の場合とは異なり,正値定常解の集合の性質が詳しく分かっていないために,現在のところ大域的な分岐構造の決定に成功していない.しかしながら,単調な正値定常解の集合に関しては,その第1要素の球の中心での値を新たにパラメータとして取り直すと,その集合はある関数のグラフとして表現できることが示せている.また,数値的検証法を用いた正値定数定常解の周りでの局所的な分岐構造の解析により,正値非定数定常解の集合上でサドル・ノード型の二次分岐が現れることが確認できている.これらにより,定常解の大域的な分岐構造を決定するための一つの手がかりが与えられ,生物の住処が高次元の場合にも正値定常解の集合の構造が徐々に分かってきている。 住処が高次元の場合には未解決問題が多く残されており,今後の課題としては,正値定常解の集合がどのような解で構成されているのか,全領域での正値定常解にはどのようなものがあるのかなどについて解析を行なう必要がある.
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