2004 Fiscal Year Annual Research Report
複数の確率的要因を含む集団遺伝学モデルの確率過程論的研究
Project/Area Number |
15540134
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
飯塚 勝 九州歯科大学, 歯学部, 助教授 (20202830)
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Keywords | 確率過程 / 一般化拡散過程 / 条件付漸近分布 / 集団遺伝学 / 有効個体数 / 個体数変動 / 互助的中立突然変異 / 分子進化 |
Research Abstract |
次の3つの研究を行った。 1.一般化拡散過程における条件付漸近分布の解析と集団遺伝学モデルへの応用 一次元一般化拡散過程を考え、境界点へ到達していないという条件の下で、時間を無限大にした漸近分布(条件付漸近分布)、及び、関連した分布や平均に関する定理を証明した。その結果を用いて、集団遺伝学における複数の確率的要因(確率的自然淘汰とrandom genetic drift)を含むモデルの条件付漸近分布、及び、関連した漸近的性質を明らかにした。 2.個体数の変動を伴う中立モデルの集団の有効個体数の研究 個体数の変動と突然変異を伴うWright-Fisherモデルの集団の有効個体数と個体数の調和平均の関係を、個体数変動の相関の性質により分類した。さらに、この有効個体数と、個体数が変動する場合の幾つか集団遺伝学モデルに対してこれまでに提唱した有効個体数との関係を明らかにした。とくに、有効個体数が常に個体数の調和平均より大きくなるのは連続時間モデル(拡散モデル、遺伝子系図学モデル)の性質であり、離散時間モデル(Wright-Fisherモデル)では有効個体数は個体数の調和平均に等しいか、小さくなり得ることを示した。 3.互助的中立突然変異モデルの研究 互助的中立突然変異モデルを自然淘汰に関して優性の効果をもつ2倍体生物集団モデルに拡張し、二重突然変異体の集団への固定待ち時間が、優性の効果がない場合と比較してどの程度短くなるかをコンピュータ・シミュレーションを用いて解析した。優性の効果が存在すれば、2つに遺伝子間の組換え率が小さくなくとも、平均固定待ち時間が短くなり得ることを示した(Genetical Researchに投稿中)。
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