2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540252
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
谷井 義彰 埼玉大学, 理学部, 助教授 (50207172)
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Keywords | AdS / CFT対応 / 超重力理論 / 共形場理論 / 超対称性 |
Research Abstract |
AdS/CFT対応は、反ド・ジッター(AdS)時空上の超弦理論や超重力理論と1次元低い時空上で定義された共形場理論(CFT)との等価性を示すものであり、場の理論の非摂動論的性質を解析するための新たな方法として注目されている。当初のAdS/CFT対応では、共形対称性と高い超対称性をもった理論が主に扱われていたが、現実的なゲージ理論に適用するためには、より低い対称性を持つ場合を考える必要がある。 本年度の研究では、低い対称性を持った理論に対するAdS/CFT対応について考えるために、摂動による対称性の破れについて調べた。具体的には、IIB型超弦理論からトーラス・コンパクト化によって得られる6次元の最大の超対称性をもった超重力理論を使った。この6次元の理論は、3次元AdS時空と3次元球面の直積の形の解を持ち、その解はN=(4,4)超共形対称性をもった2次元のCFTに対応する。この解にベクトル場の摂動を付け加えた新しい解が、すでに知られていた。この摂動によって、N=(4,4)超共形対称性がどのように破れるかについて、CFT側と超重力理論側の両方でくわしく調べた。 CFT側では、この摂動は、共形ウェイトが(2,2)または(1,1)の演算子に対応することがわかる。これらの演算子と超Virasoro代数の生成子との交換関係を計算することによって、N=(4,4)超共形対称性が、(2,2)演算子の場合はN=(4,2)ポアンカレ超対称性に、(1,1)演算子の場合はN=(4,0)超共形対称性に破れることを示した。超重力理論側では、フェルミオン場の超対称性変換を調べることにより、CFT側とまったく同じ対称性の破れが得られることを示した。CFT側と超重力理論側の結果の一致は、AdS/CFT対応の仮説が正しいことを示す新しい証拠とみなすこともできる。 これらの結果は、現在投稿準備中の論文で発表する予定である。
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