Research Abstract |
本年度は,10次元および11次元超重力理論のコンパクト化におけるモジュライ動力学の問題を研究し,次の成果を得た. 1.フラックスコンパクト化の安定性:最近,内部空間複素モジュライ自由度の完全固定を実現するモデルとして,IIB型超重力理論におけるフラックスコンパクト化が注目を集めている.そこで,このモデルにおけるに超対称解であるワープした定常解が,内部空間サイズの摂動に対して安定化かどうかをフラックスおよびディラトン場についてのある自然な仮定のもとで調べ,フラックスや内部空間の構造の詳細によらず,常に不安定であること,また,その不安定性はサイズモジュラスに対して加法的に発現することを一般的に示した.この結果は,JHEP誌に発表した. 2.M理論における光的厳密解:超重力理論では時間的に定常な解は宇宙の加速膨張を説明できず,また超対称解は常に因果的Killingベクトルをもつため,最近,光的な解が注目を集めている.そこで,計量と4形式フラックスについてのある制限のもとで,11次元超重力理論における光的な厳密解の一般的なクラスを求めた.この解は,一般に1個以上の1変数任意関数を含んでおり,これを適当に取ると,2つの異なる漸近的平坦領域をつなぐ時空が得られ,そのトーラスコンパクト化によりコンパクト化の動的な変化を研究するのに利用できる可能性がある.この成果はPhysics Letter B誌に発表した. 3.ワープしたコンパクト化の有効理論:IIB型超重力理論およびヘテロ型M理論におけるフラックスコンパクト化に関して,内部空間のサイズモジュラスと4次元時空計量に対する,ワープを考慮した4次元有効理論を世界で初めて導いた.結果は,いずれの理論に対しても,作用積分がフラックスがない場合のII型理論と全く同じ構造をもつというもので,これと高次元厳密解についての議論を比較することにより,4次元有効理論が元々の高次元理論から得られるものより広い解を許容するという結論が得られる.この成果は,JHEP誌に投稿し,掲載決定となった.
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