2005 Fiscal Year Annual Research Report
半導体微細構造におけるゼロ磁場スピン分裂の解明と量子計算機への応用
Project/Area Number |
15540304
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土家 琢磨 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40262597)
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Keywords | スピン才差運動 / 量子井戸 / スピン・コヒーレンス長 / ドレッセルハウス機構 / ラシュバ機構 / スピンFET / InAs |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き2次元系でのスピン才差運動とそのコヒーレンスの研究を行うとともに、スピンFETへの応用について研究を行った。 昨年度の研究で、2次元電子ガスのいわゆるDPスピン緩和を抑制し、スピン・コヒーレンス長を増大させる方法を見いだしたが、実際のスピンFETではラシュバ場を変化させてスピン分極を変化させる必要があるため、この条件を常に維持できるわけではない。このためスピンFETを有効に動作させるためには、何らかの工夫が必要である。これに関して我々は、スピンFETのゲート電圧の符号を反転させることで、有効磁場の方向を90度回転させることが可能であることに注目した。このことを用いると、スピンが回転する条件とスピンが全く回転しない条件とを、コヒーレンス長を保ったまま行き来させることが可能である。スピンが回転する条件下でスピンがちょうど反転する距離とチャネル長を等しくすれば、十分なスピン・コヒーレンス長を維持したまま、ON-OFF動作が実現できるのである。このことは、スピンFETの研究開発の進展に大きな影響を与え得ると思われる。 またこれとは別に、ラシュバ場のトポロジーを考慮して、いわゆるコルビーノ型の円形電極を用いることを提案し、電子伝導にともなうDPスピン緩和のシミュレーションを行った。その結果、円形電極を用いることでDPスピン緩和を抑制できることが明らかになった。ドレッセルハウス場が小さい物質や構造でスピンFETを実現するための一助となるだろう。
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