2006 Fiscal Year Annual Research Report
半導体微細構造におけるゼロ磁場スピン分裂の解明と量子計算機への応用
Project/Area Number |
15540304
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土家 琢磨 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40262597)
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Keywords | スピン才差運動 / 量子井戸 / スピン・コヒーレンス長 / ドレッセルハウス機構 / ラシュバ機構 / スピンFET / 核スピン / 化合物半導体 |
Research Abstract |
本年度は、引き続き量子井戸におけるスピン才差運動とその空間的コヒーレンス、およびそのスピンFETへの応用についての研究を行った。さらに、電子スピン才差運動への原子核スピン分極の影響についても研究を行った。 昨年度に提案したコルビーノ型電極については、不純物やフォノンなどによる運動量散乱を考慮して、さらに詳細な研究を行った。運動量散乱によってスピン・コヒーレンスは減少するが、その程度はわずかで、応用上十分なスピン・コヒーレンスが保たれることが明らかとなった。コルビーノ型電極は、ドレッセルハウス有効磁場と比較してラシュバ有効磁場が支配的な状況下でのスピンFETの実現に有効であることが確認できた。 原子核スピンの影響については、電子スピンと原子核スピン間のフェルミ接触相互作用を考慮して、原子核スピン分極と電子スピン才差運動のシミュレーションを行った。その結果、原子核スピン分極が電子スピン才差運動に大きな影響を与えることが分かった。原子核スピンの分極に要する時間は10秒程度で、それにより電子スピン分極の大きさは最大で数10%減少する。これは応用上たいへん問題となり得る結果である。しかし、有効磁場を時間的に変化させることで原子核スピンを乱すことができれば、電子スピン才差運動に対する原子核スピンの影響が十分に減少する可能性がある。今後、有効磁場を時間的に変化させた場合の、原子核スピン分極の影響を詳細に研究する必要があるだろう。
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Research Products
(1 results)