2005 Fiscal Year Annual Research Report
放射光核共鳴散乱によるナノマテリアルのスピン構造および電子・格子相互作用の研究
Project/Area Number |
15540308
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸 誠 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (40243109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 康浩 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00303917)
北尾 真司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00314295)
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Keywords | 核共鳴散乱 / 放射光 / ナノマテリアル / スピン構造 / 電子・格子相互 / 超微細相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、磁性Fe量子ワイヤーに対して、電子状態および振動状態について調べることを目的として、放射光核共鳴散乱測定を行った。電子状態に関しては、ワイヤー形状とスピン構造との相関について調べ、振動状態については、ワイヤーとバルクの状態のフォノンとの相違についての研究を行った。 放射光核共鳴散乱法で電子状態についての測定を行う場合、メスバウアー分光法の場合と同じく、超微細相互作用をとおして電子系に関する情報を得ることが出来る。ワイヤー中におけるFe原子核をパルス放射光により共鳴励起を行うと、前方方向に散乱されてくる脱励起に伴う時間遅れ成分は、X線入射方向と原子核位置における内部磁場方向とのなす角度に依存して時間スペクトルが変化を示すことが知られている。そのため放射光の高指向性を用いることで、通常のメスバウアー分光法と比較して、スピン方向の研究に適したものとなっている。測定されたスペクトルは、ワイヤー方向に対するX線入射方向に依存して変化を示すことが観測された。このスペクトルを解析したところ、内部磁場の方向は大きな異方性を示しており、その方向は量子ワイヤーの長手方向と一致していることより、ワイヤー内の磁区における磁化方向がワイヤーの方向と一致していることが確認された。よって、この方法により量子ワイヤーや量子ドット等のナノ磁性体における内部磁場やスピン方向に関する情報を得ることが可能であることが示された。また、核共鳴散乱法はある特定元素の振動状態だけについての測定を行う事が可能であり、量子ドットやワイヤーの場合に、基板等の影響を排除して固有のフォノンに関する測定が可能である。測定の結果、ワイヤー径に依存したフォノン状態密度変化が観測され、それらが非調和効果によるフォノン寿命の変化であることを明らかにすることが出来た。
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