2004 Fiscal Year Annual Research Report
硫化鉄での圧力誘起絶縁体-金属転移における格子振動の研究
Project/Area Number |
15540319
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小林 寿夫 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 助教授 (40250675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 信彦 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 教授 (60013497)
毛利 信男 埼玉大学, 理学部, 教授 (40000848)
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Keywords | 高圧力 / 格子振動 / 金属絶縁体転移 / 電荷圧縮率 |
Research Abstract |
硫化鉄(FeS)は、常圧力下で六方晶troilite構造をとる反強磁性半導体である。室温・圧力下では3.5,6.5GPaで構造相転移をともない半導体-金属-半導体へと電子状態が変化する。一般に、金属-絶縁体転移においては金属状態の電荷圧縮率が、その転移の性質を決める上で重要な役割を果たすことが理論的に指摘されている。そこでFeSの圧縮率とフォノン状態密度から見積もられる原子間結合力が直接関与する圧縮率を求めることでFeS金属状態の電荷圧縮率を求めることを試みた。我々は、放射光単色X線を用いた^<57>Fe核共鳴非弾性散乱(NIS)を測定し、FeSの高圧力下部分(Fe)フォノン状態密度を実験的に求めた。 測定したNISスペクトルには、相対エネルギー・ゼロ(14.413keV)に強い非干渉性弾性散乱ピークが存在し、さらにフォノン消滅・生成が関与する非弾性散乱成分が有限の相対エネルギーの位置に観測された。Fe原子が関与するフォノン状態密度をこの非弾性成分より抽出した。さらに、バンド計算によりFeSフォノン状態密度、部分フォノン状態密度を求め実験と比較した。その結果、計算されたフォノン状態密度が実験結果をよく再現することが分かった。この計算されたフォノン状態密度を用い高圧力下X線回折測定から決定された圧縮曲線中での原子間結合力が直接関与する割合を見積もった。その結果、FeS金属状態では約30%の電荷圧縮率が含まれることが分かった。 一方、低温・圧力下でのFeS相図の決定は行なわれていない。そこで、圧力下X線回折、電気抵抗測定を行い低温(基底状態)でのFeSの圧力相図の決定を行なった。その結果、低温では結晶変態なしに半導体-金属転移が起こることを発見した。さらにその転移での体積の変化は0.2%以下ときわめて小さいため、この半導体-金属転移は非常に弱い一次転移か2次転移であると考えられる。
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Research Products
(5 results)