2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540338
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
壬生 攻 京都大学, 低温物質科学研究センター, 教授 (40222327)
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Keywords | クロム / スピン密度波 / 界面効果 / 磁気構造 / 薄膜 / 人工格子 / 中性子回折 / メスバウアー分光 |
Research Abstract |
スピン密度波(SDW=spin-density wave)型磁気構造を示す典型物質である金属Crの磁気構造を,界面効果を利用して制御する研究を進めた.バルク状態でのCrの磁気構造は,磁気モーメントの方向がbcc(001)原子面内で平行,隣り合う(001)面間で反平行で,かつその大きさがナノオーダーで正弦波的に変調したいわゆる「格子不整合型SDW構造」となっている.このような磁気構造をもつCrのbcc(001)配向薄膜の原子層を周期的に非磁性金属単原子層で置き換えることによって,正弦波的磁気変調の「節」または「腹」を置換原子との界面位置にピン止めできることが,これまでの実験によって示されてきた.今年度より新たに本科学研究費補助金を得て,さらに結晶方位依存性に関する研究を推進することができた. 実験に用いた試料はCr(011)配向薄膜内のCr原子層を周期的にSn原子層と置換した構造をもつCr(011)/Sn人工格子で,磁気構造は中性子回折法とメスバウアー分光法を用いて調べられた.Sn間のCr層の厚さが8nmの試料では,7Kまで格子整合型の単純反強磁性構造が安定化されることが示された.一方Sn間Cr層厚16nmの試料においては,低温で薄膜面と45°の角度を為す[010]および[001]方向に変調方向をもつSDW相と単純反強磁性相が共存していることが明らかになった.立方晶の主軸方向に変調を与えようとするネスティング効果とCrの磁気モーメントを一定値まで増大させようとする界面効果の競合により,このような磁気構造が出現するものと考えられる.以上の結果は,同じCr層厚のときに膜面垂直方向に変調方向をもつSDWが形成されるCr(001)/Sn人工格子とは対照的であり、スピン密度波を人工的構造ナノ変調によって制御していく上で,結晶方向の選択と制御がきわめて重要であることが明らかになった.
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Research Products
(1 results)